医療期間満了後の病気休暇は、いかに取り扱うか?
2014年4月、従業員の王さんは5ヶ月間の病気休暇を取った。医療期間満了後、会社は王さんに対し、今後病気休暇を無給の私用休暇と見なすことを通告した。その後、9月と10月の2か月の間、王さんは病気休暇を申請した。しかし、当該2ヶ月間の病気休暇賃金の支払が必要であるか否かについては、双方の意見が一致しない。最終的に上海第一中級人民法院は王さんの2ヶ月間の病気休暇賃金の支払請求を認めないという判決を下した。
医療期間満了後の病気休暇については、本件のような病気休暇待遇の問題のほか、もう一つ多発する問題は、医療期間満了後に従業員が病気休暇を申請する場合に、使用者が病気休暇を認めない権利を有するか否かの問題である。
実務において、一部の企業は、以下のような観点を持っている: 医療期間は法律により期間の定めのある性質を有するため、医療期間満了後、従業員が病気休暇を申請した場合、使用者はそれを認めなくてもよいという考え。しかし実は、それは医療期間に対する誤解である。『労働契約法』第41条と第42条では「罹病又は業務によらない負傷により規定の医療期間内にある」従業員に対して、非過失性解約(雇用企業に過失がない場合の解約)及び経済的理由による解約を行ってはならないことを定めている。よって、医療期間に関する規定の目的は、負傷や疾病の治療により従業員がその仕事を失うことを回避することにあり、即ち、医療期間は、罹病労働者を解雇から保護する期間である。一方、病気休暇の期間とは、従業員が療養のため勤務しないことがやむを得ない期間を指し、可変的な期間であり、その前提は、従業員は、確実に罹病しているか、又は業務による負傷であるというこである。ところで、『労働契約法』第40条では、従業員が所定の医療期間満了後もなお元の業務に従事することができず、使用者が別途手配した業務にも従事できない場合における、使用者による一方的な労働契約解除を認めている。
上記の纏めとして、使用者は、かかる従業員の医療期間満了後において労働契約を解除しない場合、原則として医療期間満了を理由に従業員の病気休暇を認めない権利は有さない。
そして、次の問題は、医療期間満了後の病気休暇について、使用者は病気休暇賃金を支払わなくてもいいのか?ということだ。
『企業従業員の罹患又は業務外の負傷についての医療期間規定』では、6ヶ月以内の病気休暇と6ヶ月以上の長期間病気休暇を区分して、それぞれの病気休暇待遇を定めているが、病気休暇待遇の享有が「医療期間以内」に限るかは明確にされていない。それにより、医療期間満了後において病気休暇待遇の基準に基づいて賃金を支払うか否かは、実務上の観点が異なる。一つの観点は、労働関係が解除されていない以上、医療期間満了後も相応の病気休暇待遇を与えるべきということである。もう一つの観点は、医療期間満了後の賃金支払要否が明確でないため、労使双方の協議により決定することが可能。つまり、従業員の医療期間満了後の病気休暇を私用休暇と見なすことについて企業と従業員が合意している場合は、合意の効力が認められるべきという観点である。近年の司法実務から見れば、使用者と従業員間の約定が法律法規の強制的規定に違反しない限り、通常約定の効力は認められる。従って、前述したように法律法規では医療期間満了後の待遇について明確な規定がないため、医療期間満了後の病気休暇を私用休暇と見なすという約定は認められる可能性が高い。滬一中民三(民)終字第768号案件において、上海第一中級人民法院は、「会社が医療期間満了後の病気休暇を私用休暇と見なすことを従業員に通知した後、従業員が異議を申し立てなかった」ことを理由に、かかる従業員による病気休暇賃金の支払請求を認めなかった。北京にも、類似の事件において、裁判所は、就業規則には「医療期間を超えた病気休暇は私用休暇と見なされる」ことが定められていることを理由に、従業員の請求を認めなかった。
よって、実務上の対策として、企業は所在地の労働部門による医療期間満了後の病気休暇待遇に関する規定の有無を予め確認する必要がある。確認した結果、明確な規定がなければ、企業は社内の労働規則制度において「医療期間満了後の病気休暇を私用休暇と見なし、賃金を支給しない」ことを明確にしておくことである。