普通名称の使用と商標権侵害

    中国語の「優盤」というと、何を連想するのか?深圳朗科会社(Netac Technology Co., Ltd)の商標か、USBメモリーか、どちらかと言えば、多分後者だろう。実は、「優盤」は深圳朗科会社が1999年に登録し、USBメモリー製品に用いる商標である。2002年10月、北京のある会社はそれが記憶装置の普通名称であることを理由に、登録商標の取消を申請した。商標評審委員会は取消裁定を下した後、北京第一中級人民法院は差し戻し判決を下したが、最終的に商標評審委員会は依然として登録商標取消裁定を下した。「解百納」案件、「金峻眉」案件など、類似の商標紛争案件は珍しくない。

    普通名称とは、一定の範囲内で習わしとして次第に定まって一般化され、普遍的に使用される特定の種類の商品(服務)の名称を指す(注記:「Baidu Baike」より引用)。中国『商標法』第11条には、「その商品の普通名称……にすぎないものは商標として登録することができない。」と規定している。つまり、普通名称は商品の出所を区別することができず、商標として登録することもできない。例外としては、「表示がき使用により顕著な特徴を備え、容易に識別可能なものとなった場合、商標として登録することができる」と規定している。

    実務において、商標登録の際に名称は商品の出所を区別することができるが、商標の使用につれて、商品の出所を区別することができなくなり、当該商品の一般名称となる、即ち商標の普通名称化(又は商標希釈化)の状況もある。本件の「優盤」商標案件はその一つである。

    商標権者以外の使用者は、使用する名称又は表示が普通名称に該当するか否かをいかに判断するのか?

    通常、『最高人民法院による商標権授与・権利確認行政案件の審理の若干問題に関する意見』(以下『意見』という)の判断基準を参照して確認することができる。『意見』第7条には、「人民法院は、係争商標が普通名称に該当するか否かを判断するにあたり、当該商標が法定された、又は習わしとして次第に定まって一般化された商品名称に属するか否かを審査する。法律規定又は国家基準、業界基準によって商品の普通名称に属するものは普通名称と認定される。関連公衆が一般的に、ある名称が特定種類の商品を意味できると認めている場合、当該名称は習わしとして次第に定まって一般化された普通名称と認定される。専門辞書、辞典に商品名称として挙げられたものについては、習わしとして次第に定まって一般化された普通名称を認定する際の参考とすることができる。習わしとして次第に定まって一般化された普通名称ついては、一般的に全国範囲での関連公衆の通常認識を判断の基準とする。歴史的伝統、民俗風土、地理環境などの原因によって形成された、関連市場が比較的固定している商品が関連市場内において通用している称呼は、普通名称と認定することができる。……」と規定している。又、『意見』第8条には、「人民法院は係争商標が普通名称に属するか否かを判断する際に、通常商標登録出願が提出された時の事実状態を基準とする。」と規定している。

    『商標法』第49条の規定によると、登録商標が使用許可された商品の普通名称となった場合は、登録商標の取消を請求することができる。従って、上述の基準により、ある登録商標が普通名称に該当すると判断された場合、予め当該普通名称としての「法的保護」を除去し、最大限に法的リスクを下げるために、商標権者以外の使用者は関連登録商標の取消を請求することができる。

    このような案件は手間がかかるので、実際の必要に応じて、使用者は『商標法』第59条の「登録商標に、この商品の普通名称……を含むとき、登録商標専用権者は他人の正当な使用を禁止する権利を有しない。」の規定に基づき、関連普通名称を直接使用することもできる。

    但し、普通名称を使用する際に、名称使用の顕著性により商標使用行為と認定され、商標権侵害になることを避けるために、使用者は関連名称を合理的に使用すべきである。例えば、当該名称が全体から見て顕著性を有せず、かつできるだけ他人の登録商標の文字、図案、サイズなどと区別できること;複数の表示/名称を使用する際は、できるだけ普通名称の関連内容の字形、サイズ、色などと、別の表示/名称の字形、サイズ、色などが一致することなどに注意すべきである。