独占代理店が競争品の取扱制限に関する約定に違反した場合は、誰の責任か? —第三者による債権侵害を中心に

米国系 A 社と B 社は代理契約書を締結し、当該代理契約書において「B 社は、A 社の中国における総代理店として A 社の電子製品の販売に取り組む。又、B 社は他社の同類の製品を販売してはならない。」ことを約定した。B 社は順調に販路を拡大し、売上高を絶えず上昇させている。しかし、A 社のライバル社である C 社は B 社を気に入り、B 社に対し莫大な利益をもたらすことを約束。B 社は C 社の誘惑に負け、C 社と代理協議書を締結し、C 社の製品販売にも取り組み始めた。それを知ったA社法務担当者は代理契約書に基づき B 社の違約責任を追及するよう主張したが、営業責任者はそれに応じず、C 社が悪意をもって B 社を誘惑して違約させたため、C 社の責任を追及すべきであると主張した。このように A 社内で意見が異なり、一つにまとまらない。

言うまでもなく A 社は代理契約書に基づき B 社の違約責任を追及することができる。しかし、A 社は C 社の法的責任を追及することができるかが問題となる。

本件は、民法において論議を呼ぶ話題、即ち第三者による債権侵害に係る。第三者による債権侵害は中国の関連立法草案において複数回提起されたが、最終的に法令において明確に規定されていない。しかしながら、司法実務において、裁判所は第三者による債権侵害を肯定する判決を下すことが珍しくない。

第三者による債権侵害の種類が多様化している。契約に係る場合は、①「第三者が債務者を誘惑して違約させる」及び②「第三者と債務者が結託して債権者の利益を損なう」の二種が主である。本件は明らかに前者に該当する。実際に、種類①又は種類②を問わず、第三者による債権侵害は、第三者が他人の債権の存在を知りながらも悪意をもって侵害し、債権者が実損を受けたことを前提として成り立つ。

実務において、原告は第三者の「明らかに知っている、又は知り得る」と「悪意のある」を証明することが難しいという問題がある。

通常、第三者と債務者の関係は一つの手掛かりとなり得る。例えば、(2014)浦民二(商)初字第 2509 号(注記: 種類①に該当する)において、上海浦東裁判所が第三者の行為が原告の独占的な代理権を侵害したと認められた根拠は、主に以下のことである。①被告蔡○○は原告の出資者と元監査役であり、②関連協議書において同業原告との競合を行わないことを約定している。③原告に独占的な代理権があることをも明らかに知っている。④被告馳○社の法定代表者である朱○○はかつて原告の主要出資者である。⑤被告馳○社は被告蔡○○が出資者として受け入れた。⑥被告馳○社が西南鉄路国際旅行総社との業務提携協議書、及び西南鉄路国際旅行総社による「四川中○○○科技有限公司に対し関連資料の提出を要請することに関する書簡」をずっと提出しなかった。裁判所は、上記の状況を総合的に考慮した上で、「被告馳○社が原告の独占的な代理権の存在を知り得た状況下で、被告蔡○○の人脈を利用して自動券売機が成都鉄路局のチケット発売地域に売り込まれた」と判断した。一方、(2014)滬一中民四(商)初字第 7 号事件(注記: 種類②に該当する)において、裁判所は「原告(債権者)と債務者の間に長期的な合作関係がある」、「債務者の法定代表者である虞 A と第三者の法定代表者である虞 B は兄弟であり、虞 A はかつて第三者に董事を務めた」ことを考慮した上で、「第三者が関連状況を知っているはず」だと判断した。又、裁判所は債務者と第三者間の「売買協議書の内容には、明らかに商慣習に合致しない約定がある」という事実に基づき、「債務者と第三者が悪意をもって結託した」と認めた。

そのほか、実務において、一部の客観的状況も、第三者が「明らかに知っている、又は知り得る」ことの証拠になる。例えば、債権者又は債務者が独占的な代理協議書を締結することをメディア又はインターネットが報道する事実や、或いは債務者が展示会などの公の場面で関連状況について行う宣伝や説明等。

個別ケースにおいては、もし「第三者が明らかに知っている、又は知り得る」、「悪意のある」などを証明することが難しいなら、債務者の違約責任を追及するほかない。この点から、違約条項の内容及び責任に関する約定は大変重要である。