ソフトウェアの使用に潜むリスク及びその対応
甲社技術部の従業員数名がインターネットから製図ソフトウェアをダウンロードした。その数ヶ月後、甲社は乙社からの弁護士書状を受け取った。その内容は、、乙社が著作権を有するソフトウェアを甲社従業員がダウンロードし使用したため、甲社に対し乙社が百万元のソフトウェア使用許諾料の支払を要求するものであり、かつ甲社従業員が当該ソフトウェアを使用した証拠も付けられていた。甲社は、ソフトウェアのダウンロード及び使用は、従業員個人の行為であると判断し、料金の支払を拒否した。その結果、乙社は訴訟を起こし、裁判所が調停を行った上で、双方は和解協議書を締結したが、甲社は不必要な代価を払うこととなった。
各種のソフトウェアは業務効率向上に大いに役立つが、その管理をおろそかにすると、企業は「時限爆弾」というソフトウェアの使用による潜在的なリスクを抱えることになる。
実務において、一部の企業はリスクについて認識し、一定の措置を講じている。例えば、ある会社の社則制度では、従業員が海賊版ソフトウェアを使用すること、又勝手にソフトウェアをダウンロードすることを禁止する規定が設けられている。但し、それら規定を設けたらとしても、企業は従業員の行為に対して監督管理義務を負い(条項で規定しているだけで、関連措置を講じていない場合は、管理行為の合理性に明らかに問題が生まれる)、またソフトウェア不正使用により利益を得た場合、最終的に調停により解決する事になり、その結果、大部分の事案で不正使用した企業がソフトウェア購入代又は使用許諾料を支払うこととなっている。又、一部の企業では、従業員に対し自らパソコンを購入するよう要求することにより、紛争が生じた場合に、その不正使用が従業員の個人行為であると主張する「対策」を採っている。しかし残念ながら、上述した管理行為の合理性と利益の帰属という二つの要素に基づき、大部分の判決では依然として、従業員の所属企業が相応の法的責任を負うべきであると認定している。
企業が、ソフトウェア使用によってもたらされる法的リスクを少なくするためには、下記の方法が考えられる。
まず、汎用ソフトウェアについて、企業は関連のハードウェアを購入又は賃貸する時に、サプライヤーに汎用ソフトウェアの正規品のインストールを要求するとともに(正規品のソフトウェアのインストール時に家庭版ではなく、企業版を使うよう注意すべきである)、協議書において、サプライヤーがインストールしたソフトウェアが正規品でない場合、サプライヤーがその責任負うことを明確に約定しておくこと。当然、コストの問題を考慮すれば、代替可能なソフトウェアであれば、無料又は低価格なもの導入が考えられる。そうすれば、仮に不注意で非正規品のソフトウェアをインストールしたとしても、権利者が、訴訟費用と訴訟による収益を考慮し、訴訟を提起する可能性が比較的す少ないと思われる。
次に、非汎用ソフトウェア、例えば、技術研究開発又は市場設計などの関連業務に用いるソフトウェアの場合、指定パソコンにのみ関連ソフトウェアをインストールし、かつ社則制度及び技術的手段を用い、従業員が関連ソフトウェアをその他のパソコンにインストールすることを禁止することである。
最後に、ソフトウェアのダウンロードとその使用を監視すること。企業は規則制度においてソフトウェアのダウンロードとその使用ルールを明確にしておく一方、定期的に従業員のパソコンを検査し、規則違反行為を是正し、規則違反があれば、その関連従業員に罰を処する。そうすれば、権利者により訴えられるリスクを下げることができ、また個別事件が生じた場合も、企業は従業員に対する監督管理義務をきちんと履行しているため、権利侵害についての故意または過失がないことを証明することもできる。