企業の債権回收問題の対策

    競争相手に勝つために、甲社は「何よりも販売を最優先する」方針を打ち出した。販売担当者は一生懸命販売契約の締結に取り組み、取引先の信用状況や支払い条件などの契約締結の際の「ハードル」も、全て販売量上げることに座を譲り、後回しになった。その結果、時間が経つにつれて、甲社の販売実績は確かに迅速に伸びたが、それに伴い、債権回収の問題が多発するようになり、。甲社は資金及び経営の面で大きな圧力に直面している。

    実務において、企業の債権回收問題は珍しくない。その原因もさまざまである。甲社のように業績を重視しすぎ、営業に販売契約締結を放任することが原因であることもあれば、契約締結に対する社内審査が甘い、又は形式的に行うだけであるため、最終的に取引先の支払い能力不足、もしくは、代金の支払いを拒否され債権回収不能となることもある。更に、企業が営業に対して、販売目標を達成するかどうかのみに着目し、代金回収についてまったく注意を払わないため、債権回收管理は、「真空」の状態になるケースもよく見られる。根本的なことを言えば、これらの問題の発生要因は、企業が債権管理をあまりにも軽視しすぎていることにあると思われる。

    債権管理は、往々に販売、財務、法務、管理など多くの部署に係わり、企業の部門及び権限の設置によって状況が異なるが、その核心は債権(契約)締結過程の把握及び債権回收の監督管理にある。

    取引先の関連状況及び相応の取引条件の設置は、間違いなく契約締結過程で最も重要なことである。債権管理の規範化から見れば、企業は関連管理制度において、それぞれの取引先信用ランキングにおける規則及び取引条件の基準を明確にすべきである。それらの規則及び基準においては、営業部門が、どのような取引先に関連する情報、証明資料を提出すべきか、又はどの部署により契約条件の確認、審査認可を行うか、又は各ランクの取引先に適用される相応の取引条件の制限、及び特殊なケースに対する審査認可要求などを含む。

    注意すべきことは、取引先の状況は変化する可能性があることである。従って、前述の取引開始段階での取引先状況に対する審査認可を除き、企業は完全な取引先状況報告制度を構築し、営業担当者に対し取引先状況の変化について適時報告し、フォローするよう求める必要がある。参考となるやり方として、企業は、業界の特徴及び企業自身の需要に合致する「取引先状況変動判断ガイドライン」を設け、営業に対し留意すべき重要事項及び報告要領を指導することである。一般に、取引先状況の変動と言えば、生産停止・廃業、大量又は巨額なクレーム・返品、出資者又は高級管理職の調整、支払いの突然停止又は遅延などが含まれる。

    契約締結過程の把握はリスク低下に有効で、合理的かつ有效な債権回收の監督管理メカニズムは債権回收を確保する要である。

    債権回收の監督管理において、企業は多くの措置を講じることができると思われる。実務において、比較的有效な措置については、次のことが考えられる。人事労務管理において、代金回収を営業のコミッション計上の前提とすること。人事考課において、債権の回收率を考課項目とすることにより、営業に債権回收と販売量を同等に重視してもらうようすること。財務会計部門においては債権管理規則、例えば、財務会計部門から営業部署への支払い督促提示ルール、取引先に対する支払い督促ルール(勘定照合及び支払い督促のタイミング、方式、内容などを含む)などを明確にすること等。そのほか、完備な文書保管、引継ぎ制度も債権回收の監督管理の重要な一環であり、企業がやむを得ず訴訟、仲裁などの手段で債権を回収するとき等に、完全で十分な証拠を提供すること際に役立つと思われる。

    債権回收管理メカニズムは、企業が「千里の堤もアリの穴から崩れる」ような悲劇を避けるためにも、その役割は重視されるべきである。