『中華人民共和国専利法改正草案(審査提出稿)』の意見募集
2015年12月2日、国務院法制事務室が『中華人民共和国専利法改正草案(審査提出稿)』(以下『改正草案』という)を公布し、意見を募集している(付注:専利=特許+実用新案+意匠)。『改正草案』では、実質的な改正に係わる条文は計33条、その内18条の現行の条文を改正し、14条を追加し、1条を削除した。『改正草案』のキーポイントは下記の通りである。
意匠についての規定を大きく改正した。主に以下の通りである
局部の意匠権の保護を明確化した。意匠の定義を「製品の形状、模様又はそれらの組合せ、及び色彩と形状、模様の組合せに」から「製品全体又は局部の形状……」に改正した。
意匠権の保護期間を10年から15年に延長した。
意匠権の国内優先権制度を確立した。「意匠を中国で最初に出願した日から6ケ月以内」に、中国で優先権を享有する。
職務発明の定義の改正
職務発明創造を「所属組織の任務を遂行するために完成させた発明創造」と限定し、「所属組織の物的技術条件を利用して完成させた発明創造の帰属について約定されているときは、その約定に従う」と明確にした。
特に注意すべきことは、『改正草案』では、「所属組織の物的技術条件を利用して完成させた発明創造の帰属について約定されていないときは、出願する権利は発明者又は創造者に属する。」と規定した。
専利権侵害行為に対する懲罰の強化
『改正草案』では、専利権損害賠償金額の上限を100万元から500万元に改正する。草案が可決される場合、当該上限は新商標法より規定されている損害賠償金の上限300万元を超える。
新商標法と同様に、賠償金額における特殊な証明ルールを確立した。『改正草案』第68条には、「権利者は証拠の提示に尽力し、権利侵害行為にかかわる帳簿、資料は主に権利侵害者が掌握している状況下において、人民法院は権利侵害者に権利侵害行為にかかわる帳簿、資料の提出を命じることができる。権利侵害者が帳簿や資料を提示しないか又は虚偽の帳簿、資料を提示した場合、人民法院は権利者の主張及び証拠を参考にし、賠償金額の認定を行うことができる。」と規定した。
「集団による権利侵害行為、権利侵害行為の繰り返し等、市場秩序を乱す故意による特許権侵害被疑行為がある場合、特許行政部門は法により取り締まり、過料を科すことができる。」と規定した。
「ネットサービス提供者は、ネットサービスを受けるユーザーが当該ネットサービスを利用して特許権を侵害し、特許を詐称したことを知り、又は知り得るにもかかわらず、必要な措置を講じない場合は、連帯責任を負う」と規定した。
そのほか、『改正草案』では専利権濫用の防止について、「専利権出願と専利権行使は信義誠実の原則を遵守しなければならない。専利権を濫用して公共の利益を損害したり、又は競争を不正に排除、制限したりしてはならない。」と原則的な規定を定めた。但し、当該規定は具体的な規則やその他の法律法規に支持されない限り、効果が生じないと思われる。国家工商行政管理総局は数ヶ月前『知的財産権濫用による競争排除、制限行為に関する規定』を公布し、特許部門と工商部門はいかに協力して管理するかも現実的な問題である。