従業員の非違行為に対しての懲戒処分期間は制限を受けるのか?
A社の『就業規則』では、従業員が急遽病気休暇をとった場合、病気休暇終了後の3業務日以内に病気休暇手続を済まさなければならず、さもなければ無断欠勤と見なされることを規定している。王さんは急遽病気休暇をとったが、その後上記規定の通りに病気休暇手続を行わなかった。そのため6か月後、A社は、王さんを無断欠勤をしたと見なし、これは会社の規則制度に著しく違反することであるという理由で、彼との労働契約を解除した。王さんが労働仲裁を提起した結果、労働仲裁委員会は、会社が6か月以内に労働契約解除の処理をしていないことから、会社は、王さんの病気休暇を認めていたということを認定することができ、最終的に会社の労働契約解除が違法であると裁決を下した。
本件での着眼点は、企業の解雇理由の合理性の有無ではなく、従業員が企業の規則制度に著しく違反した状況の下、企業が従業員の非違行為を処分する際に期間の制限を受けるかどうかにある。
元『企業従業員賞罰条例』第20条では、従業員処分の審査期間は、従業員が過失を犯したことを証明できる日から起算し、解雇処分は5か月、その他の処分は3か月を超えてはならないことが規定されていた。しかし、当該条例は既に失効しており、現行の法律法規および司法解釈では非違行為の処分期限についていかなる規定も定められていない。
従って、多くの企業は、非違行為を行った従業員を処分するタイミングは自由に決定することができると認識している。実務において、「過去に処分しないであげた“貸し”を返してもらおう」という考えから、従業員が非違行為を行った後に、勤務態度がよくない、又はその他の原因により企業が従業員を雇用し続けたくない場合、従業員が過去に非違行為を行ったことを理由に解雇するなどの処分を行う企業は少なくない。しかし、問題となるのは、企業が従業員の非違行為に対する処分を著しく滞らせた場合、労働仲裁機構及び裁判所に認容されないリスクがある。
その理由は、従業員の非違行為はさまざまあるため、法律法規により各種の非違行為に対しての処分期間を統一的、 画一的に定めることは不適切であるが、労働に関連する法律法規で規定されている手続の正当性から見ても、当然のこととして手続の合理性と平等性は含まれているべきであるからである。
手続の合理性は処分期間の合理性を含む。本件を例として、通常企業は月毎に賃金を支払い、賃金計算時に従業員の出勤状況を確認する。仮に当該企業が月越しで出勤状況を確認していたとしても、遅くとも2か月後、企業は王さんの欠勤日数を発見できるはずであり、その時に原因究明の上相応の処分を行うべきである。しかし、A社が6か月経過してはじめて処分を行うことは明らかに道理に適っていない。また、手続の平等性は、全ての従業員に対して同一の手続を適用することを指し、同一の手続は、同一の違反行為について基本的に同一の期間内に処分を行うべきであることを意味する(たとえば、特定の非違行為について、年末考課前に処分を行うか、それとも年末考課後に処分を行うかによって、一定期間内に当該考課結果に基づく当該従業員の能力給に対して大きな影響を及ぼす可能性がある)。
実務において、企業は下記の面から、従業員の非違行為に対しての処分期間を合理的に考慮することが考えられる。
第一に、出来る限り従業員の非違行為について適時に調査を行ない、関連証拠を保存し(従業員本人の説明を聴取したり、従業員の書面による承認を取得したりする等)、従業員が事後に否認したり、証拠収集が困難になることを防止する。
第二に、企業の実際の状況に応じて(例えば、従業員が多いため、ばらばらに取り扱うと効率が低い、又は非違行為を行った従業員の勤務態度を一定期間内にチェックする必要があるなど)、規則制度において非違行為の処分期限について原則的な規定を設ける。例えば、企業は原則として四半期毎に当四半期の従業員の非違行為を処分し、特殊な非違行為はその限りでないなどという規定は、法律で要求される手続きの適正性を満たすことが出来るとともに、企業の従業員管理における融通性、効率性の要求をある程度満たすことができる。