『中華人民共和国科技成果転化促進法』改正案は2015年10月1日より施行

    2015年8月29日、全国人民代表大会常務委員会が『科技成果転化促進法』改正案(以下、改正案という)を可決し、10月1日より施行される。改正案の下記規定に注意を払う必要があると思われる。

    特許法と同様に、改正案では職務発明の奨励金と報酬について「約定優先」の原則を採用している。但し、「国の設立する研究開発機構、大学」に対してその約定の基準を制限し、即ち法定比率の下限を下回ってはならない。

    奨励金と報酬金の法定比率の下限について

    改正案では奨励金と報酬金を区分せず、三つの状況における奨励金と報酬の法定比率の下限について下記通りに規定している。

    他人に科学技術成果を譲渡し、又は他人に科学技術成果の実施を許諾した場合、当該科学技術成果の譲渡又は許諾による純収入から50%以上の割合で引き出すこと。

    科学技術成果の価値を評価して出資する場合、当該科学技術成果によって形成された持分又は出資の比率から50%以上の割合で引き出すこと。

    職務科学技術成果を自ら実施するか、又は他人と協力して実施する場合には、転化を実施し操業に成功した後、連続して3年ないし5年の間、毎年当該科学技術成果の実施による営業利益から5%以上の割合で引き出すこと。

    これらは明らかに特許法の規定と異なっている。特許法では奨励金と報酬の法定基準についてそれぞれ規定を行い、かつ報酬の下限は使用許諾料の10%及び特許有効期間内に実施による営業利益の2%とする(意匠の場合、0.2%)。

    奨励金と報酬を獲得できる人員範囲の拡大

    改正案第44条の規定によると、科学技術成果の「創造」に重要な貢献をなした要員(特許法では職務発明の発明者、設計者に相当する)だけではなく、科学技術成果の「転化」(当該法の第2条によると、既存の科学技術成果に対し「継続実験、開発、応用、普及を行う行為」をさす)に重要な貢献をなした要員も奨励と報酬を獲得できる。

    特許に関する奨励金と報酬について約定を行っていない場合に、特許法を適用するか、それとも改正案を適用するかは、実務上、問題がはっせりすると思われる。従って、会社にとって、「約定優先」の原則に基づき、自社の状況に合致する職務発明奨励及び報酬制度を早期制定しておくことが、根本的な解決策であると考えられる。