不適切な年休管理がもたらすリスクとその応対策?
A社は従業員の福利厚生制度をよりよくするために、『就業規則』において、法定年次有給休暇(法定年休)日数に5日間の有給休暇もプラスすることを規定している。しかし、この規定により、従業員が退職時に全ての年次有給休暇の消化を求めたり、賃金の300%で全ての未消化分の休暇を買い上げるように会社に要求するという様な問題が生じた。A社は、法定年休を超える分は法定福利に該当しないため、会社は退職従業員の法定外年休の消化を許可できず、又未消化休暇分は買取の対象外とする権利を有すると主張しているが、なかなか従業員に納得してもらえず、 A社は、悩んでいるのである。
A社の問題は不適切な年休管理の典型的な事例であるA社の根本的な問題は、法定年休を超える分は法定福利に該当しないため、退職従業員の福利年次有給休暇の消化及び未消化分の取扱いについて全く規定を設けていないことにある。
『企業従業員年次有給休暇実施弁法』第13条には、労働契約において約定した、又は会社の規則制度において規定された年次有給休暇日数が法定基準を上回る場合、関連約定又は規則に基づいて執行しなければならないと規定されている。本件において、A社の『就業規則』所定の年次有給休暇日数が法定基準を上回っているが、法定年休日数より超過分の消化規則などについて予め明らかにしていなかったため、会社と従業員がその執行基準についてそれぞれの言い分を主張し、合意できないという困難な状況をもたらしたのである。その場合、会社は、人事管理上不必要な圧力を受けるほか、万が一訴訟となった場合、予測できないリスクに直面せざるを得ない。
従って、企業は法定外有給休暇の関連規則を制定するときに、下記の事項に注意すべきである。
まず、誤解が生じないように、法定外年休を法定年休と区別して扱う旨を定め、また未消化の法定外年休を翌年度に繰り越すことができるか否かなども明確にしておく。
次に、コストを効果的に抑えるために、法定年休と法定外年休の消化の順番について明確にしておく。例えば、「1暦年以内に法定年次有給休暇を消化した後に、福利年次有給休暇を消化できる」。
最後に、法定外年休の消化と未消化場合の取扱規則を明確にする。およそ次の2点について明文化しておく必要があると思われる。①退職時に未消化の法定外年休があれば、従業員はその消化を求める権利があるかどうか、②本年度の未消化の法定外年休について、会社は買い上げを行なうかどうか。