「New Balance」にならないための対応策

    9800万元の損害賠償額を認めた、 「New Balance」商標権侵害事件の一審判決により、米国New Balance会社は2015年「蟻の一噛みは象をも倒す」事件の悲劇的な主人公になった。実は、New Balanceが唯一の「象」なわけではない。それよりも前に、米国Pepsi-Cola社(「青色の嵐」商標権侵害事件)、フランスCastel社(「卡斯特」中国語商標権侵害紛争)等も中国において類似の事件に遭遇している。

    商標の逆混同(Reverse Confusion)の問題は、New Balance等が噛まれた「象」になった原因である。

    商標の逆混同とは、通常、後願商標使用者(知名度の高い大手企業)が、他社(知名度の小さい中小企業)の先願商標を使用することにより、消費者に先願商標権者の商品が後願商標権者のものであるという認識を生じさせることを指す。法律で商標の逆混同を規制する根本的な目的は、大手企業による中小企業の先願商標権に対する侵害を抑制し、中小企業の先願商標の正常な役割と価値を発揮させるためである。

    中国市場の発展に努めている知名度の高い外国企業は、「商標の逆混同」 を防止することで、模倣品の取り締まりや中小企業による「ただ乗り」の予防すると同時に、重要な問題も含むことを認識すべきである。さもなければ、2代目「New Balance」になり、深刻な代価を払う可能性がある。

    通常、企業は少なくとも下記の2方面において商標の逆混同を防止する必要があると思われる。

    1つ目に、関連商標の中国における登録状況を事前に調査、把握しておくこと。つまり、中国で関連市場の開拓に力を入れる前に、中国におけるブランドに関わる標識の登録状況を調査し、もし関連標識がまだ登録されていないのであれば、早急に商標登録を出願する必要がある。特に外国語での表示の中国語訳が一つに当てはまらないことが多い(音訳、意訳等)ため、実際の状況に応じて幾つかの連合商標を登録しておく必要がある。また、関連商標が既に他社により登録されている場合は、それぞれの状況に応じて相応の措置を講じる。例えば、他社の登録商標及びそれに類似する標識の使用を避けること、また、他社の登録商標が、「同一又は類似の商品について出願した商標が、中国で登録されていない他社の著名商標を複製、模倣又は翻訳したものであり、かつ同著名商標と容易に混同を生じさせる場合には」、その登録または使用を禁止される商標に該当するため、権利者は相応の主張を提起する等。それ以外に、考えられる措置としては、市場占有率があまり高くないうちに、必要に応じて比較的低い価格で関連商標を譲り受けることなどがある。

    2つ目に、企業のブランド戦略を適時に更新すること。ブランドの発展過程において、新類別での製品の生産、販売が必要となる場合は多いと思われが、企業が新製品を開発使用した場合に、新類別での商標登録を行う必要があるかどうかを事前に確認し、それに応じて相応の措置を講じなければならない。

    最後に、市場、営業部門又は取次販売店などにより関連製品を普及、販売するときも、販売過程において関連商標表示の使用を規範、管理する必要があり、同業種のその他の企業の商標、表示、特有名称など紛争を引き起こしうる言葉を使用しないよう注意することも重要である。