退職した従業員にボーナスを支給すべきのか
揚州某会社の従業員趙さんは年末に会社を辞めた。賃金清算時に趙さんは当年の年末ボーナスが支給されていないことに気づき、会社に対し年末ボーナスの支給を要求した。しかし、会社側は、「就業規則」において年末ボーナスの支給対象者は3月の支給時点で在職している従業員に限ると規定されていると主張した。そのため、趙さんは労働仲裁を提起した。最終的に揚州労働仲裁委員会は、会社に趙さんの当該年度の実際の勤務時間に基づき相応の年末ボーナスを算出し支給するよう裁定を下した。
実務において、多くの企業が一般的に労働契約、社内規則制度において、ボーナスの支給時点で在職している従業員しか、ボーナスを得られないことを規定している。これにより、ボーナス支給日前に退職した従業員と企業間の労働紛争が多発している。しかし、多くの仲裁裁定及び裁判所判決から見て、個別事件において、退職した従業員に対してボーナスを支給すべきか否かについての判断は一致していない。
その根本的な理由は、法律法規及び大部分の地方性労働法規では企業の各種のボーナスを区分せず、かつ相応の規定を行っていないからである(例外:『深圳市従業員賃金支給条例』では、実際の勤務時間に基づき年末ボーナスを計算すると明確にされている)。元労働部『「労働法」の貫徹執行の若干問題に関する意見』には、「賃金とは、雇用企業が国の関連規定又は労働契約の約定に基づき、貨幣形式により直接当該企業の労働者に対して支払う労働報酬を指し、一般的に……ボーナス……等が含まれる。」と規定している。従って、通常、ボーナスは労働報酬に該当し、労働者賃金の構成部分の一つである。但し、企業が規則制度や労働契約を通じてボーナスの支給に制限を行っている場合、このような制限の法的効力について、実務において、裁判官が『労働法』に定められている雇用企業に、労働者の賃金のピンハネや理由もなく支払いを拒絶してはならないという規定を踏まえて判断するか、約定が法律規定に違反しない限り有效になるという観点から判断するかによって、その結果が異なると思われる。しかし、いずれにしても、この場合に、規定または約定の内容及びその合理性は、この問題に対する裁判官の判断に大きな影響を与えると考えられる。
又、ボーナスの支給についての書面による規定や約定がないものの、企業は年末ボーナスを支給する慣習がある場合に、支給前に退職した従業員が企業に年末ボーナスの支給を要求する訴えは支持を得られるか否かについて、実務において、裁判の結果はケースバイケースで不確定である。但し、一般的に、もし労働者が企業にこのような慣習があることを立証することができない場合、その訴えは支持を得られる可能性が低いと思われる。
そのほか、企業が、ボーナスが法律所定の「賃金」範疇に該当しないことを明確にしている場合は、退職した従業員を支給対象の範囲に取り入れなくてよい。法律所定の「賃金」範疇に該当しないボーナスには、継続勤務奨励金(例えば、従業員の将来の勤務を期待するものとして、年末に在職する従業員に対して一定金額の奨励金を支給するなど)、会社が労働者の労務と関係なく特別事由に基づき支給するボーナス等が含まれる。
比較的特殊な項目は実績ボーナスである。実績ボーナスは主に労働者の過去の一定時期内の勤務態度、目標達成などに対する評価に基づき確定するため、「賃金」の構成部分に該当するという観点が圧倒的である(特に北方の各地区)。但し、企業が実績ボーナスの支給規則についてルールを明確にした状況下で(例えば、従業員考課制度において、考課期間の満了時に既に退職した従業員は評価対象とされない等と定め、それと同時にボーナス制度において、考課結果に基づいてボーナスを支給することに関する規則を巧妙に規定しておく)、従業員の実績ボーナスに対する支給請求を支持しない司法機関もある(特に約定を認める可能性の高い江蘇、浙江、上海エリア)。その理由は主に、従業員がボーナス取得の関連規則を知っていながら自らボーナス取得の機会を放棄したと見なされるからである。
従って、会社はボーナスに関わる規定を設けるときに、予め所在地の地方性規定及び司法実務の傾向を調べる一方、ボーナスを適切に分類し、合理的な取得条件を設け、臨機応変に企業の経営管理上の需要を実現させたほうがよいかと思われる。