企業は精神病罹患の従業員にいかに対応するべきか
Qさんは、X社入社後まもなくうつ病に罹った。X社はQさんの病気がその業務及びほかの従業員に影響を及ぼすのではないかと心配し、うつ病としてのはっきりとした診断が下された後3か月もたたないうちにQさんと労働契約を解除し、解雇予告手当及び経済補償金を支払った。QさんはX社の決定が受け入れられず、双方は紛争となった。仲裁、訴訟を経て、最終的に裁判所は双方の労働契約関係を回復し、X社がQさんに対し相応の病気休暇賃金を支払うという判決を下した。
では、雇用企業はいかに精神病罹患の従業員に対応するのが妥当なのか?
まず、精神病は疾病の一種に該当し、雇用企業は医療機関の関連規定に基づき労働契約を処理すればよい。労働契約の存続について、『労働部による〈中華人民共和国労働法〉貫徹執行の若干問題に関する意見』第34条によると、医療期間内に労働契約期間が満了する場合、労働契約の期間は自動的に医療期間満了までに延長する。労働契約の終了日は労働契約期間の満了日又は医療期間の満了日のいずれか遅い日に準ずる。一方的な労働契約解除について、『労働契約法』第40条によると、従業員が規定の医療期間満了後もなお元の業務に従事することができず、雇用企業から別途手配された業務にも従事することもできない場合、雇用企業は一方的に労働契約を解除することができる。従って、雇用企業は従業員の精神病疾患を理由に労働契約を解除するためには、二つの条件を満たさなければならない:1、時間的条件、つまり医療期間満了後でなければならないということ。2、手続的条件、つまり従業員は元の業務に従事することができず、雇用企業から別途手配された業務にも従事することもできないということ。本件については、X社が講じた方式は『労働契約法』第40条に合致しないため敗訴となった。比較的特殊な情状は、『精神疾患に罹患した契約社員の医療期間問題に関する返事』によると、雇用企業が雇用条件(例えば、求人案内、労働契約又は職場説明)において「精神疾患に罹患した場合は雇用条件に合致しない」ことを明記した場合は、雇用企業は試用期間内に労働契約を解除することができる。但し、このような場合は、雇用企業は雇用条件の具体的な言葉遣いに注意し、就業差別と認定されないようにすべきである。
次に、雇用企業は、精神疾患に罹患した従業員の自己都合退職の問題に慎重に取り扱うべきである。精神疾患に罹患した従業員に発病期があり、いったん発病した場合は、民事行為能力を喪失しうる可能性があるため、雇用企業は従業員本人及びその後見人と共同で関連文書を協議、締結したほうがよい。さもないと、退職は無効と認定されるリスクがある。ある事件において、上海市静安区裁判所は、従業員の発病時期における退職を無効と認定し、労働契約関係を回復する判決を下した。
最後に、精神病は特殊な病気であり、雇用企業は従業員に精神病鑑定又は診断を強制してはならない。もし従業員は精神疾患の兆候があるにも関わらず、検査を拒否する場合は、雇用企業は直ちにその家族と連絡をとり、利害得失を説明し、早く治療を受けるよう促すべきである。