荷物紛失場合、宅配業者は限度額内の責任を負うか、それとも実損額を賠償するのか?

    李さんは中通速達会社(以下「中通」という)を利用して2万元に値する物品を郵送し、速達貨物運送状において物品の名称、仕様、数量を明記したが、価格表記(付注:郵送中に事故が発生した場合、差出人が補償を請求できることを指す。日本の現金書留に類似する。)を選択しなかった。物品が紛失した後、李さんは速達貨物運送状及び物品購入の領収書をもって、中通に損害賠償を請求したが、中通は『郵政法』又は速達貨物運送状の「速達注意事項」に照らして責任限度額(速達料金の数倍にあたる金額)のみの賠償を認めた。その後、李さんは裁判所に訴訟を提起し、裁判所は「速達注意事項」での価格表記の関連規定が無効な条項であることを理由に、中通に紛失物品の価値に相当する金額を賠償させるという判決を下した。

    実は、中通以外に、中国では多くの民営速達物流会社は速達貨物運送状において、「保価」を選択しない場合、紛失の物品について速達料金の数倍にあたる金額しか補償しないことに関する条項を定めている。各地の裁判所は、荷物紛失を起因する損害賠償紛争について速達会社にいかに責任を負わせるかについて、統一的な判断基準がない。司法実務において、上記のような条項は自分の責任を免除し、差出人の実損に基づく損害賠償請求権を排除する無効な条項と判断し、実損額での賠償を認めた裁判所があれば、速達会社が提示・説明義務を十分に履行しなかったことを理由に、実損額での賠償を認めた裁判所もある。又、速達料金の数倍にあたる賠償金しか認めなかった裁判所があれば、僅かの事件において速達会社が善管注意義務を尽くさなかったことを理由に、物品の一部の価値に相当する賠償金の支払いを命じた裁判所もある。 

    では、差出人はいかにして自分の利益を守る?

    まず、『郵政法』では、配達サービスにおける価格表記での賠償及び限度額での賠償の関連規定は「配達企業」(付注:「中国郵政集団会社及びその郵政サービスに従事する全額出資企業、持ち株会社を指す)にのみ適用すると規定している。従って、郵政企業を通じて発送する必要のないの物品は、民営速達会社を通じて発送したほうがベターとだと思われる。 

    次に、差出人は発送物品の価値を証明できる証拠を適切に保存すべきである。これは、物品の実際価値を証明するほか、発送物品が実際価値に対応する物品であることも証明する二重の意義がある。例えば、本件において、李さんは物品購入領収書を提供するとともに、物品の名称、仕様及び数量を明記した速達貨物運送状を提供した。

    又、速達会社が免責約款の関連条項について十分に提示・説明したか否かに注意を払う必要がある。実務において、前述したように、免責約款が無効であることを理由に、速達会社に差出人の実損額を賠償させた判決があったが、そのやり方を採ると、同じ問題について「郵政企業」と「民営速達企業」によって裁判所の判決も異なるはずである。従って、裁判所はそのやり方ではなく、速達会社が提示・説明義務を果たしたか否かによって事件の具体的な状況を分析し、結論を下すことが多いようである。

    当然、最も妥当な方法は、差出人が高価な物品を郵送するときに、速達会社に説明を行い、「価格表記」を選択し、発送物品の関連書類を保存することであると考えられる。