会社が違法行為を行った場合、なぜ法定代表者にも法的責任を負わせるか?
A社は、電子製品の製造及び販売に従事しており、その製品は、中国国内で販売されるものもあれば、「来料加工」の形態で仕上げてから海外へ輸出するものもある。原則としてA社は注文を受けてから、生産手配を行うため、クライアントが要求する納期までの期日が短い場合、原材料の供給は間に合わないケースも、時折発生する。国内販売品と輸出品に用いられる原材料のブランド及び型番は同じであるため、納期を守るために、製造部の部門長は、時に保税原材料と非保税原材料を交換して使用していた。ところで、A社は、原材料の使用について、その法定代表者兼総経理であるB氏の事前認可が必要としている。A社は税関の調査を受けた際、情状が深刻であるとして、A社の行為は普通貨物密輸罪に該当すると認定され、その法定代表者も刑事罰を受けた。
会社が違法行為を行っている場合、相応の法的責任を負うことには間違いないが、なぜ法定代表者も法的責任を負わなければならないのか?
『刑法』の関連規定によると、普通貨物密輸罪の犯罪主体が組織である場合、それを直接担当する主管者及びその他の直接責任者も刑事罰を受ける可能性が高い。又、「直接担当する主管者」について、最高裁による『全国裁判所の金融事件を審理する業務座談会紀要』(法〔2001〕8号)によれば、「組織が実施する犯罪において決定、認可、示唆、放任、指揮等役割を果たす者を指し、一般的に組織の主管責任者となり、その法定代表者を含む」としている。本件において、A社の法定代表者は、原材料使用申請表を確認し署名しているため、裁判所は、当該法定代表者を直接担当する主管者と認定したわけであり、刑事罰を与えたのは妥当であるだろうと思われる。
司法実務において、原則として、法定代表者が会社の犯罪において上述の役割を果たすことを証明できる直接証拠がなければ、裁判所は、一般的に法定代表者に刑事罰を与えない。
では、本件において、仮に法定代表者B氏は原材料資料申請表に署名していないとしたら、如何なるリスクもなくなるわけであるか?言い換えれば、法定代表者は、不作為という方法で会社の違法行為による法的責任を回避することができるか?
その答えはNOである。『会社法』第13条によると、法定代表者は、会社の定款の規定に従い、董事長、執行董事又はマネージャーが就任する。同法第148条では、董事、高級管理職(マネージャーを含む)は、会社に対して忠実義務及び勤勉義務を負う。従って、法定代表者の不作為、即ち関連の管理義務を履行しないことにより、『会社法』が定める勤勉義務に違反し、会社に損失を与えた場合、賠償責任を負わなければならない。
よって、法定代表者は、会社が合法的な経営をしていることに対して逃れようのない責任を負う。実際には、多くの会社の高級管理職は、違法に経営する意図がないが、厳格かつ効果的な社内管理体系又は審査認可制度の欠乏により、結果その経営行為が法律又は法規に違反することになり、会社の管理者(特に法定代表者)に深刻な法的リスクを与えることとなる。本件を例とすれば、A社の製造部の部門長又は法定代表者は、密輸について主観的悪意がないかもしれないが、法律トラブル意識の不足により、職務上の過失を犯し、深刻な結果を引き起した。
如何に法に従い経営すれば、不必要な法的リスクを回避できるかは、会社の法定代表者を含む管理職が重視すべきか課題であると思われる。簡単に言うと、全面的で規範化した規則制度を設立し実施すること、また、各レベルの従業員の法律トラブル意識を強化することが重要であると考えられる。