会社法の最新改正による取引安全への影響について

    2013年12月28日に改正された『中華人民共和国会社法』(以下「新会社法』という)では、特定業界に対して別途規定がある場合を除き、会社設立時の登録資本金の最低限度額の廃止、払込済登録資本金の登記もされなくなり、引受登録資本登記制へ切り替わる。又、企業の設立においても増資においても資本金払込検査が不要とされる。新会社法は2014年3月より施行される。

    上述の改正は、企業による将来の取引の安全に対する不安を引起したようである。

    新会社法は将来の取引の安全に対してどのような影響を与えるか?新会社法の施行後において取引リスクの審査と管理についてどのような問題に注意を払うべきか?これらは企業が考えなければならない問題であると思われる。

    会社法の改正による取引安全への影響は、実は払込済登録資本金登記制の取引安全保証機能と引受登録資本金登記制の取引安全保護機能との差異の有無及びその程度によるものと考えられる。払込済登録資本金登記制の場合、登録資本金が高額であれば取引相手方に会社の財力を表明できるため、取引前の調査では通常は対象会社の登録資本金の金額及びその払込状況が含まれる。言い換えれば、取引相手方にとって、登録資本金は会社の信用、財力の判断する要素となり、「登録資本金」は信用担保の役割を果たすわけである。しかし、払込済登録資本金登記制の取引安全保証機能が発揮されるのは、二つの基本条件を満たす必要がある。二つの要素を満たして、初めてその「担保」の役割を果たすことができる。一つは、登録資本金が確実に払い込まれること。もう一つは、会社の経営においてその資産の変動が登録資本金の金額と明らかに合致していることである。しかし、実務において、会社設立代行業者による「出資立替」や払い込まれた資本金の払い戻しなどはよくあることで、会社の資産もその会社の経営状況や業界市場状況等の変化により変動し、場合によっては大幅に下がり、登録資本金と大きくずれることとなる。従って、実際に、登録資本金の信用担保役割がうまく果たされることは難しい。一方、引受登録資本金登記制の場合、誰でも巨額の登録資本金(例えば、5千万元)設定が可能なので、登録資本金は取引安全の判断要素にならない。この場合に、取引リスクの抑制は、取引当事者による市場取引体系、取引相手方の主体資格、信用状況の把握に左右される。これは新会社法が取引安全に最も大きな影響を与えると思われる。

    前述の新会社法の規定及びその取引安全への影響に基づき、関連行政管理部門は市場取引体系及び企業の信義誠実を管理監督するための規則又は措置を強化する&見込みである。主に以下の方面で反映されると思われる:会社の基本情報調査システムを設置、又は改善する(例えば、現行の「紅盾ネット」による調査の地域制限を破り、調査可能な内容を拡大する等);企業会計監査を強化し、会計監査の結果を適当に開示する等;工商、税務、銀行、裁判所等が会社の違法行為有無情報、訴訟状況等に対する監督管理の体系化、関連情報の公開化等。

    この背景下で、会社は取引リスクの審査と管理において、少なくとも下記の問題に注意を払うべきである。

    一、業界の特徴及び取引の内容に基づき、特定の取引相手方に対する調査重点の確定。例えば取引相手方の出資者の背景、資産状況、これまでの取引情况等。

    二、行政管理部門の取引管理体系の有效利用。取引リスク調査を行う際に利用できる部門、機構、方法、内容等を適時に了解・更新し、公共資源を最大限に利用する。

    三、企業内部の取引リスク審査管理体系の强化。規模が大きい又は重大な取引が多い又は新規の取引対象がよくある会社は、専門な社内与信管理機構又は職務を設置し、専門者を配置して取引リスク審査と管理を行うようにする。