OEM加工企業の特許権侵害問題

実務において、OEM加工企業が独自に、又は委託企業と共に第三者により特許権侵害を理由として提訴される事例は日増しに多くなってきている。委託加工契約に基づきOEM加工を行う企業の加工製品が第三者の特許権を侵害した場合、特許権侵害の責任は製品の製造業者、販売業者である委託企業が負うべきか?製品の加工業務に従事するOEM加工企業が特許権侵害責任を負う必要があるのか?
委託企業の特許権侵害責任について、一般的に議論されない。つまり、OEM加工企業の特許権侵害責任については、以下のような観点がある。製造業者は委託企業であるため、加工企業は委託企業の要求に応じて製品の加工に従事し、加工費用を取るだけで、製品が他人の特許権を侵害するか否かなどについては通常知りえず、特許権侵害の主観的故意が存在しない場合、その製品が第三者の特許権を侵害した際、加工企業に特許権侵害の責任を負わせることは不公平であるではなかろうか。
しかしながら、正解はそうではない。
中国における『特許法』第11条には、「発明及び実用新案の特許権が付与された後、本法に別途規定がある場合を除き、如何なる企業および個人は特許権者の許諾を受けずに、その特許を実施すること、つまり、生産経営を目的として、その特許製品を製造、使用、許諾販売、販売、輸入すること、又はその特許方法を使用すること、もしくは当該特許方法により直接獲得した製品を使用、許諾販売、販売、輸入することはできない。意匠特許権が付与された後も、如何なる企業および個人は特許権者の許諾を受けずに、その特許を実施すること、即ち生産経営を目的として、その意匠特許製品を製造、販売、輸入することはできない。」と規定している。そのため、いかなる者も、自分に属さない特許を実施する(製造、使用等を含む)には、特許権者から許可を取得することが前提である。」と規定している。一方、『特許法』第69条に規定されている五つの「特許権侵害とみなされない」状況、及び第70に規定されている賠償責任を負わない対象も、「特許権者の許諾を経ずに製造し、販売されたと認知していない状況において、生産経営を目的として特許権侵害製品を使用したり、販売を許諾したりした場合、あるいは販売したりした場合、当該製品の合法的な仕入れ元を証明できるもの」のみに限られる。即ち権利侵害と認知していない加工者が含まれない。よって、OEM加工企業は、受託で加工する製品が他人の特許権を侵害した場合、特許権侵害責任を追及されるリスクが存在する。 
では、OEM加工企業は如何に当該法的リスクを防止し、起こりえる損失を回避又は減少させることができるのか?
まず、委託加工契約の締結前に、全面的に生産する製品にかかわる特許権の帰属状態を厳格に審査する必要がある。もし委託企業が製品関連の特許権者である場合、委託企業に特許権の証明文書を提供してもらう必要がある。もし委託企業が特許権者ではない場合、『特許法』第12条の規定(「いかなる企業又は個人も、他人の特許を実施する場合は、特許権者と書面で実施許諾契約を締結し、特許権者に特許使用料を支払わなければならない。被許諾者は、契約で規定された以外のいかなる企業又は個人に対しても当該特許の実施を許諾する権利を持たない。」)に基づき、OEM加工企業は、委託企業が特許権の使用許諾を合法的且つ有效に取得するかどうかについて確認する必要がある。
次に、委託加工契約において、製品関連の特許権及びありうる権利侵害責任を明確に約定する。OEM加工企業は委託企業に対し、その製品が他人の知的財産権を侵害せず、OEM加工企業が第三者により知的財産権を追究されることで損失を被った場合には、委託企業が相応の賠償責任を負うことを保証してもらう。
最後に、自分の利益をできる限り守る観点から考えれば、OEM加工企業は、委託企業と製品加工過程に生まれる新しい特許など知的財産の権利帰属を明確にする必要がある。もし約定により新しく生まれる知的財産権が加工企業に帰属する場合、他人が先に出願し、又は他人による出願後に提訴されることを防止するために、加工企業は適時に関連の知的財産権出願手続きを行うべきである。