「十倍の賠償」?それとも「退一賠一」?

    王さんは、コンビニでケーキ1個を買おうとしたが、代金を支払った後、ケーキに表示されている賞味期限が切れていることに気付いたため、コンビニに対してケーキ代金の返却及びケーキ代金の10倍に相当する賠償金を要求し、コンビニも、それに同意し且つ賠償金を支払った。数日後、同僚の張さんもコンビニでケーキを買って、食べてる最中にケーキに蝿が入っていることに気付いた。王さんのケーキ事件を思い出して、張さんもコンビニにケーキ代金の返却及びケーキ代金の10倍に相当する賠償金を要求したが、コンビニは、「退一賠一」(不良品を返品すると同時に同様の新品または価格相当の金額を賠償すること)にしか同意しなかった。

    同じケーキの品質問題について、何故コンビニは二人の顧客に対して違う処理方法を採るのか?『食品安全法』第96条には、「…… 食品安全基準に適合しない食品を製造した場合、又は食品安全基準に適合しない食品であることを知っていながら販売した場合、消費者は損害賠償を請求すること以外に、製造者又は販売者に対して支払い金額の十倍の賠償金を請求することができる」と規定している。つまり、販売者が10倍の賠償責任を負うという前提は、販売者に意図がある、即ち、食品が食品安全基準に適合しないことを知っていながらもその食品を販売することである。一方、『食品安全法』では、「知る」の意味と証明責任について明確に定めておらず、関連の司法解釈もないため、司法実務において、「知っている」の判断については、統一的な基準がなく、また個別案件における判断結果にもばらつきがある。

    実務において、工商行政管理部門、消費者協会等機構の代表的な観点は、販売者の「知っている」の表現形式を10類に分けている[1]。消費者にとっては、主に以下の三つの方法において直感的に初歩的な判断を行うことができると思われる。先ず一つ目に、商品表示についてであるが、商品表示に製造者及びその生産許可証番号が表示されているかどうか。二つ目に、感官で食品が腐っていると判断できるのに販売されていること、三つ目に、賞味期限が切れているにもかかわらず販売されていることである。

    本件において、王さんが買ったケーキの表示されている賞味期限が切れているので、コンビニがそれを「知っている」と推定するのは、一般に議論の余地がない。その一方、張さんが買ったケーキについては、ハエがその中に入っていることは外から判断できないので、コンビニがそれを知っていた可能性はあるかどうかは、前述した実務部門の代表的な観点と具体的な情況を結び合わせて分析しないと判断できないと考えられる。
また、販売者が知らずに販売する場合には、消費者は、やむを得ず次善の策を採る。即ち『消費者権益保護法』第49条に基づき販売者に対し「退一賠一」を要求するしかできないのだ。

    注:

    [1]「知っていながら販売する」行為の表現形式について実務部門は以下の10類に分けている。(1)食品安全基準に明らかに適合しない食品を販売している場合。(2)賞味期限が切れた食品を販売し、又は食品の販売可能期間を延ばすため、商品の生産日付を変更、調整した場合。(3)処罰を受けた後同じ違法行為を再度行った場合。(4)事前に警告を受けたが、是正を拒否した場合。(5)同じロットの食品が関連部門の検査によって食品安全基準に適合しないと確定され、メディアで取り上げられた後も依然と販売している場合。(6)食品安全問題で関連部門により商品販売停止を命じられた後、監督部門の同意を得ず、発売し、且つ食品安全基準に適合しないと証明された場合。(7)故意に不正な販売ルートを採り、且つ価格が本物を大幅に下回っている場合。(8)領収書、帳簿など会計証憑をごまかし人を騙した場合。(9)事件発生後、物証を移転したり、偽りの証明、情報を提供したりした場合。(10)販売者が「知っている」と認定できるその他の行為。