土地使用権出資における制限及び法的リスク
『会社法』の関連規定によると、法律または行政法規に特別な規定のある場合を除き、出資者は、「通貨によって評価することができかつ法に従い譲渡することのできる非通貨財産を換価して出資することもできる」。よって、原則として、土地使用権をもって出資することは可能となっている。しかし、特定の土地使用権を現物出資の対象とすることが可能か否かについては、当該土地使用権は、法に従い譲渡することが可能かどうかによると思われる。実務において、土地使用権の譲渡可能性及びそのリスクを判断する際に、一般に、以下の方面で当該土地使用権に法律上の支障があるかどうかを分析する。
先ず、土地使用権の法的性質。関連の法律法規の規定によると、划撥土地使用権(划撥とは、行政配分のこと、即ち政府の行政指令により建設用地を無償で割当てることを指す)及び農民団体所有の土地使用権は現物出資対象外とされている。よって、划撥土地使用権の場合、一般に、予め行政審査許可手続きを経て払下げを行ってから出資することとなる。
次は、土地使用権に権利負担があるかどうかの問題である。抵当権等の権利負担が付着している場合において、土地使用権を現物出資財産として出資することができるかどうかについては、現行法律法規には、統一的かつ明確な規定がなく、また実務においても種々の議論がある。しかし、わが国の会社法が採用している資本充実の原則から見ると、抵当権等の実行により出資の不確定性をもたらす可能性があるため、抵当権が付着している土地使用権は、企業が受け入れる現物出資財産には適さない。また、『会社登記管理条例』第十四条(「株主は、……担保を設定している財産等を評価して出資してはならない。」)は、担保権の付着している土地使用権を出資することについて禁止している。更に、司法実務において、『最高人民裁判所による「中華人民共和国会社法」の適用の若干問題に関する規定(三)』第八条は、「出資者が……権利負担が設定されている土地使用権をもって出資した場合、会社、その他の株主又は会社債権者が出資者の出資義務の未履行の認定するを主張するときは、人民裁判所は、当事者に対し指定した合理的な期間内に……権利負担を除去するよう命じなければならない。期限を徒過しても……未除去の場合、人民裁判所は、出資者が法に基づき、出資義務を完全に履行していないと認定しなければならない。」と定めている。言い換えれば、出資者が抵当の付いている土地使用権をもって出資する前提条件は、『物権法』に基づき抵当権者の同意を得ることではなく、関連の権利負担を完全に除去することである。よって、出資前に土地使用権上の負担が除去された場合を除けば、政府機関による審査許可または登記の角度から見ても、行為の効力の角度から見ても、権利負担の付着している土地使用権出資を受け入れるリスクはかなり高いと思われる。
三番目は、土地使用権を分割して出資する問題である。『都市部の国有地使用権の払下げ及び譲渡に関する暫定条例』第二十五条は、「土地使用権と地上の建築物、その他附着物の所有権が分割して譲渡される場合においては、市、県の人民政府土地管理部門と建物管理部門の許可を受け……なければならない。」と規定している。『国家土地管理局による分割譲渡を如何に理解するかに関する回答』によると、「第二十五条にいう土地使用権の分割譲渡とは、一つの土地における土地使用権を全部譲渡するわけではなく、一つの土地を二つまたはそれ以上に分けてそれぞれの土地使用権を譲渡する行為を指す」。よって、土地使用権者は、土地使用権を分割して出資することができるが、市、県の人民政府土地管理部門と建物管理部門の許可を受けなければならない。実務において、関連の契約の発効後に土地使用権の分割申請が拒否されることにより関連の出資者にリスクを与えることを回避するために、関連の契約において関連政府機関の許可を契約の発効要件として約定する必要があると思われる。
最後に、対象土地の開発状況の問題である。未開発土地の使用権を現物財産として出資することができるかどうかについては、実務において定説がない。『都市不動産管理法』第三十八条は、「払下げ方式で取得した土地使用権に係る不動産を転譲するとき」、かかる土地の開発が「開発投資総額の百分の二十五以上完成させたものである」などの条件を満たしていない場合、その譲渡を制限している。実務において、土地使用権を評価して出資することは、土地使用権の譲渡に該当しない、という観点もあり、また、商務部門、工商登記部門にとって、審査許可または登記手続きを行う時に、一番注目するのは、かかる土地は譲渡禁止対象(划撥土地であるか否かなど)に属すかどうかという問題であるべきが、各地の国有地管理部門は、よく土地の開発が法律の定める条件を満たしていないことを理由にして土地使用権出資の登記手続きを拒否する。
実務において、当事者が出資しようとした土地使用権において上記のリスクがあるにもかかわらず、その他の出資者が特別な事由により当該土地使用権の現物出資を受け入れようとした場合には、法的リスクを最小限にするために、契約を通じて約定するか、土地使用権をもって出資しようとしている出資者に担保の提供を要求するよう勧める。