自動車リコール新条例は、どこまで影響するのか?
『欠陥自動車リコール管理条例』(以下、『条例』という)は、2012年10月10日に公布され、2013年1月1日より施行される。立法の階層が元『欠陥自動車リコール管理規定』(以下、『規定』という)より高い新条例として、最大で欠陥自動車の販売額の10%に相当する罰金、複数の部門間での自動車製品の関連情報共有メカニズム、国務院製品品質監督部門の主動的調査権等の新規定は、多くの消費者より大きく期待されている。では、『条例』の新規定は、どこまで自動車関連企業に影響を与えるか、また自動車関連企業による欠陥自動車製品のリコールに有効に働きかけるか、更に製品品質監督等関連部門の新権力、新メカニズム及び新処罰措置により消費者のクレームの解決が容易になるか。上記の問題について、我々の観点としては、『条例』だけでは飽き足らず、現行メカニズムの下で大きな変化はないだろうと思う。
まず、『条例』第24条によると、生産業者に欠陥自動車製品の製造、販売又は輸入を停止しない、又は欠陥情況を隠してごまかす、又はリコールを命じられてもリコールを実施しない状況の何れかがあるとき場合には、「欠陥自動車製品の販売額の1%以上10%以下に相当する罰金を科す」こととなるが、罰金額の幅は大変大きいのであるため、如何にその割合を決めるかについて、如何なる客観的な判断基準も定められていないので、上記の規定の実施及び効果はまだ分からないと思う。又、『条例』第23条と第24条では、企業が『条例』の関連規定に違反して、「情状が深刻である場合」には、「許可機関が関連認可の取り消しを行うものとする」と規定しているが、情状が深刻であることについて、客観的、統一的な判断基準がないため、当該条文も「空文化」される可能性があると思われる。
次に、リコールの手続きについて、『規定』と同じく、『条例』も自主リコールと強制リコールの二種類に分けている。そのうち、注目されているのは、新しく定められた、強制リコール手続きの最初の段階における製品品質監督部門による欠陥調査権である。製品品質監督部門の積極的な介入が大変有意義であることは間違いないが、製品品質監督部門が消費者からのクレームを受け付けてからどのくらいの時間内で取り扱わなければならないのか、また同じロットの自動車製品に対して、どれくらいの消費者によるクレームがあれば欠陥調査を展開するか(即ち、欠陥調査展開のクレーム数量基準)等について、具体的な規定はない。よって、製品品質監督部門による調査開始の判断基準が不明の状況下で、調査を開始するべきかについて、外からでは判断又は監督できない。
一番肝心なのは、欠陥自動車リコールの中核問題である技術鑑定についてであるが、メカニズム等といった方面において、従来の規定を突き破るようなものがなさそうである。『条例』自身は、技術鑑定について、新規定を定めていない。又、実務においても、製品品質監督部門には専門的技術鑑定機構が設けられておらず、ほかにも完全に独立した第三者である鑑定機構は存在していない。2012年12月、中国自動車技術研究センターの100%出資により設立された法人の北京中機車両司法鑑定所は正式に成立した。しかし、長期に亘って中国自動車技術研究センターは多くの自動車企業との間で業務提携を行っているため、その傘下にある北京中機車両司法鑑定所の公正性及び独立性について、疑いを生じさせる恐れがある。又、もうひとつの現実は、中国における車両司法鑑定の関連基準が完備されていないため、現在において、車両司法鑑定を行う際に、主に参考とされているのは自動車の関連技術基準及び交通事故の関連鑑定基準(例えば、『交通事故車両安全技術検査鑑定GA/T642-2006』)などである。
上記以外に、『条例』は、複数の関連部門間での自動車製品の関連情報の共有メカニズムについても、原則的な規定に止まっており、具体的に規定していない。
よって、現時点から見ると、『条例』の施行により、一定程度は関連自動車企業の品質管理向上が図られる一方、深刻な影響を与える可能性は低いだろうと考えられる。
なお、個人消費者が生産業者又は経営業者に対して自家用自動車の「三包」(即ち修理保証、交換保証、返却保証)責任を追及することに関する規定は、十年余りの時を経て、「間もなく正式に発表される」とのこと。それが現実になると、関連自動車企業への影響は少なくないと思われる。