中国における商業賄賂の認定及び防止
ここ数年、中国では外資企業による商業賄賂事件がしばしばクローズアップされている。ルーセント、シーメンス、エイボン、リオ・ティントなど世界の有名企業も商業賄賂スキャンダルに巻き込まれていた。商業賄賂事件は、関連企業に経済上の損失をもたらした一方、企業のイメージや名誉に対しても深刻な損害を与えた。よって、中国における商業賄賂行為の認定基準を把握の上、経営活動において自社の行為の規範化に注意を払い、類似事件の発生を防止するよう努力するのは、外資企業の経営管理にとって無視できない課題となっている。
現在、中国には反商業賄賂の統一された立法が無く、商業賄賂に関わる規定は、散在し錯綜しているため、商業賄賂行為の判断及び規制に統一性や明確性が欠けている。『不正競争防止法』及び『商業賄賂行為の禁止に関する暫定規定』等関連法律法規の規定によると、商業賄賂行為の認定基準は大体以下の通りである。
一、商業賄賂の主体について、主に商品の販売又は購買又は購入を行う経営者に限定される。又、「従業員が賄賂の手段で経営者のために商品の販売または購入を行った場合にも、その行為は経営者による商業賄賂行為とみなされる」。
二、目的について、取引に影響を与え、競争相手を排除し、取引の機会を勝ち取るためのである。
三、客観的には相手組織又は個人に「財物またはその他の手段」にて贈賄を行った行為がある。
先ず、「財物」の認定について、「財物」とは、現金と現物を指し、販売促進費、宣伝費、援助費、科学研究費、労務費、コンサル料金、コミッション等の名義に見せかける、あるいはこれらの各種費用を精算する方法により、財物を支給することを含む。しかし、「財物」には、商慣習に従い小額の宣伝用景品を贈ることが含まれない。「小額」についての明確な基準が定められていないが、正常な商慣習で認められる範囲を超える高額のエンターテインメント或いは景品、例えば、海外旅行や贅沢品の場合は、商業賄賂と認定される可能性があると思われる。
一方、刑事事件受理基準の角度から見れば、最高人民法院と最高人民検察院による『商業賄賂刑事事件の処理における法律適用の若干問題に関する意見』は、『刑法』に定める贈収賄罪における「財物」には、金銭によりその額を計算することのできる財産的利益も含むことを明らかにした。同時に、最高人民検察院による『贈賄罪事件受理基準に関する規定』によると、個人による贈賄額が一万元以上、組織による贈賄額が二十万元以上の場合、事件を受理すべきであり、且つ上記の贈賄額は、累積で計算される。よって、財物の提供側が一括で又は複数回に財物を提供し、その額が上記の基準額を達した場合、刑事責任が追及される可能性がある。
次に、「その他の手段」とは、国内外の各種名義の旅行、視察等、財物以外のその他の利益を支給する手段のことを指す。
最後に、記帳することなく密かに相手組織又は個人に割戻金を供与する場合、贈賄に該当する。