インターネット権利侵害に対して、被害者はいかに通知するのが有効か?

焦点会社は、他人が百度雲(注:中国で最大の検索エンジン「百度(バイドゥ)」が運営しているクラウドストレージサービスを指す。)を通じて、焦点会社のネットワーク情報伝達権を取得した著作物を伝達したことを発見し、直ちに百度会社に対し『告知書』を送り、権利侵害の対象となる著作物を削除するよう要求した。しかし百度会社がそれを削除しなかったため、焦点会社は訴訟を提起した。『告知書』が有効な通知に該当するか否かが訴訟の焦点となっている。第一審裁判所は、『告知書』を有効な通知だと認定し判決を下したが、第二審裁判所は一審判決を覆した( (2018)蘇民終1514号判決)。

実務において、インターネットにおける権利侵害案件は少なくない。権利侵害を受けた被害者からの通知が有効であるか否かは、インターネットサービス提供者に誤りがあるか否か、インターネットサービス提供者が被害の不当拡大に対して連帯責任を負うか否かを判断するための必要条件である。

通知の有効性は主に通知の方式と内容によって判断される。

まずは、通知の方式については、『情報ネットワーク伝達権を侵害する民事紛争事件の審理における法律適用の若干問題に関する最高人民法院の規定』(法釈(2012)20号)第13条の規定によると、ネットワークサービス提供者は書簡、ファクシミリ、電子メールなどにより通知を出すことができる。浙江省高級裁判所は公報案例(2015)浙知終字第186号判決において、「口頭又は書面で通知を行うことができる。」ことを指摘したが、実務においては、念のため、書面で通知したほうがよい。

次に、通知の内容については、『情報ネットワーク伝達権保護条例』(2013年改正)第14条には、「権利者の通知書は次の内容を含む。(1)権利者の氏名(名称)、連絡先、住所。(2)削除又はリンク切断を請求する権利侵害作品、実演、録音録画製品の名称及びウェブアドレス。(3)権利侵害に該当する初歩的な証明書類と規定している。『情報ネットワークを利用した人身権の侵害に係る民事紛争事件の審理における法律適用の若干問題に関する最高人民法院の規定』(法釈(2014)11号)第5条には類似の規定もある。但し、通知の主体は「権利者」から「通知者」に拡大された(注:権利者の代理人を含む)。

従って、通常、有効となる通知は、内容において以下の要件を満たす必要がある。

1、通知者の情報が完全性を有する。通知者の情報とは、つまり通知者又はその代理人の氏名/名称、連絡先、住所が含まれる。(2016)贛03民終60号判決は、「『弁護士書簡』には権利者の身分情報がないが、担当弁護士の氏名がありし、権利者の授権委託書も付されている。又、送り状には弁護士の連絡先及び住所が書いてあるので、事件に係る『弁護士書簡』が有効な通知に該当する」と認定した。

2、主張が明確で、権利侵害の内容が識別できる。通知者は、ネットワークサービス提供者に必要な措置を実施させるための権利侵害ウェブアドレス、リンクなどのアクセス情報を提供する。本件の第二審裁判所は、「権利侵害被害者の通知が要件を満たさない」ことを理由に、一審判決を覆した。又、「本裁判所は他の案件に係る通知の有効性を認定する時に、上記の「有効な通知は、権利侵害ウェブアドレス、リンクなどの情報を含まなければならない」という要件に厳格に従うわけではないが、権利者からの有効な通知は、少なくとも相手が権利侵害の内容を簡単に速やかに抽出し、権利侵害行為の実施主体、行為の客観的な状態を初歩的に識別でき、位置情報を把握できるようなものでなければならない。」と指摘した。従って、通知により、速やかにアクセス情報を把握して権利侵害情報を識別するために、徹底的な逐一チェック又は相応の技術改善を行う必要がある場合に、当該通知はネットワークサービス提供者の負担を不当に増やすものであり、有効な通知に該当しない。

3、通知の根拠が明確である。通常、権利帰属に係る証明などを提供する。

注意すべきことは、法釈(2012)20号第14条には、「裁判所はネットワークサービス提供者の削除、遮蔽、リンク切断などの必要な措置を適時行うか否かを認定するにあたって、権利者による通知の形式、通知の正確度、措置実施の難易度、ネットワークサービスの性質、係る著作物、実演、録音録画製品の種類、知名度、数量などの要素に基づき総合的に判断をする。」と規定している。権利者は上記の要点を把握してケースバイケースで対応し、相応の証拠を保留するべきである。