ソフトウェアサービス契約の落とし穴
ソフトウェアを利用して生産経営上の諸事務を取り扱うことを望む企業は多くなっている。その場合、企業は往々に、関連業者とソフトウェアサービス契約又はソフトウェア開発契約を締結する必要がある。実務において、委託者である企業は、検収に合格したと確認された後に代金を支払うという約定がある限り、リスクを低減できると認識し、他の条項については、あまり重視しない傾向がある。
実は上記のような考えは非常に危ない。『法律記事スクラップ』第57期の『ソフトウェア開発契約に潜むリスクの対策』では、委託者の立場から、ソフトウェア開発契約紛争によるリスク及び防止について分析されている。
今回は、ソフトウェアサービス契約に係るリスク及びその防止対策を重点的に分析する。
一つ目に、ソフトウェアサービス契約とソフトウェア開発契約の区別をつけること。『契約法』及び最高人民法院『技術契約紛争案件の審理における法律適用の若干問題に関する解釈』の関連規定によると、ソフトウェア開発契約のキーポイントは「研究開発」にあり、通常クライアントのニーズに応じてソフトウェアを開発したり、現有のソフトウェアを改善したりするもので、新しい技術の創出は切り離せないものであり、又開発に失敗するリスクもある。一方、ソフトウェアサービス契約のキーポイントは、受託者が専門的な技術・知識、経験、情報を利用して委託者のために特定の技術問題を解決することにあり、通常、新しい技術が創出されることはなく、開発に失敗することもない。従って、ソフトウェアのインストール、デバッグ、サポート、メンテナンスに係る場合は、通常、ソフトウェアサービス契約と認定される。上記のまとめとして、関連契約を作成するときは、表題及びその内容にソフトウェアサービス契約の特徴を示す必要がある。又、ソフトウェアサービス契約紛争は一般的に商事契約紛争に該当し、民事法廷が管轄するが、ソフトウェア開発契約は知的財産権紛争に該当し、知的財産権法廷が管轄する。契約の表現が不適切であれば、立件における不確定性があると共に、審理の重点も関連法規定の違いによって異なる。
第二に、委託者の「特定の技術問題」を解決する目的から、ソフトウェアサービス契約の履行過程中に双方の協力や技術指導や効果の確認が必ずしも発生する。実務において、契約の関連条項では行為主体が不明確、又は「双方は○○をすべきである」というような約定をしていることにより、役割又は責任の分担が不確定になるケースは多い。例えば、(2018)滬民申2999号判決には、裁判官は、「係る契約では、甲、乙に関する表現が混乱しており、当事者双方も、第三条「甲の協力義務」における甲、乙が誰を指すかについての意見が異なり、相手方が溶解炉の設計・製造義務を負うと認識している。」と指摘した。従って、委託者は、自らのニーズを明確にした上で、契約においてその役柄や相応の義務・責任を正確に設定しておくべきである。
第三に、人員の変更又は支払時点の設定を明確にすること。契約の履行中に係る責任者や担当者が変更された場合は、意思疎通がうまくいかず、又は考え方が変わるなどにより、契約の履行に影響をもたらす可能性がある。従って、具体的な責任者、資格要求、人員変更に伴う対処方法を約定しておく必要がある。又、ソフトウェアサービス契約では分割払いを約定することがよく見られるため、前期の支払割合をできる限り抑える一方、各段階の具体的な要求に応じて支払金額及び支払時点を設定するよう勧める。例えば、代金の一部及び品質保証金を検収後に支払うと約定したら、委託者は主動的な立場で、受託者に対して合理的な拘束を行うことができる。
最後に、契約においてソフトウェアサービスの検収基準・品質要求をできる限り詳しく記載しておくこと。実務においてサービス品質に係る紛争が一番多い。従って、ソフトウェアの期待効果、目的、サービス基準、アフターサービスなどを詳しく記載しておけば、責任分担は明確になり、裁判官の判断にも役立つと思われる。なお、契約の履行中に委託側のニーズが変化する可能性があるため、契約においてその対処方法を明確にしておくほか、双方が変更事項について合意に達したことを証明できるようするため、適時に補充協議書を締結したり、メールやり取りや確認文書の署名を求めたりすることで証拠を固めるべきである。