広告で誇張表現を使用する場合の法的リスク及び対策
「北極絨」ブランドは、以下のようなオリジナリティーあるインナーのテレビ広告を出したことがある。広告イメージキャラクターである趙本山氏は「北極絨」ブランドの保温性のあるインナーを着たまま、宇宙人に拉致されて氷に閉じ込められた。解凍された後傷一つなく、「寒い時に北極絨、地球人はみんな知ってるぞ」と平気な様子で宇宙人に教えた。上記の広告を見て、陳さんはインナーを購入した後、メーカー及びイメージキャラクターに対し訴えを提起し、「当該広告は消費者を欺き、宣伝通りの効果は見られないため、虚偽広告に該当する」ことを主張した。実務において議論があるにもかかわらず、第一審も第二審も陳さんの主張を認めなかった。
裁判所の主な理由は以下のとおりである。「当該広告はSF的な創意に該当するため、適当な誇張は許容される。一般人は当該広告がSF的な創意であることを理解できるので、虚偽広告に該当しない」。従って、広告の創意において適当な誇張を加え、消費者の誤解を招かなければ、虚偽広告に該当しない。これは、中国最高裁の『不正競争民事案件の審理における法律適用の若干問題に関する解釈』における「他人の誤解を招く」に関する判断基準(即ち、「明らかに誇張表現手法により商品を宣伝し、一般人の誤解を招くに足りなければ、誤解を招く虚偽宣伝に該当しない」)の適用であると思われる。
しかし、個別事件において、係る創意は明らかな誇張又は虚偽に該当するか、大衆の誤解を招くに足りるか否かを判断する際に、上記の中国最高裁の司法解釈によれば、日常生活の経験、関連大衆の一般的な注意力、誤解を招く事実、宣伝対象となる商品の実際状況など複数の要素を総合的に考慮すべきである。
[2018]京0105民初12794号判決において、朝陽区裁判所は、「商品包装における図形及び文字は実際に広告創意に該当する。……周さんの陳述によると、商品購入後に、初めて包装における図形と文字は虚偽宣伝の疑いがあることに気づいた。従って、商品包装における図形及び文字は周さんの誤解を招かなかった」と判断した。当該判決から見て、虚偽広告と認定されるか否かは、消費者の誤解を招くか否か、商品購入に影響を与えるか否かがキーポイントとなる。
それでは、どのような場合に消費者の誤解を招くと看做されるか。[2015]甬寧民初字第2664号判決において、原告はその購入した歯ブラシ立てセットに係わる「遇尚、一生付き添う。」という広告表現が虚偽広告に該当することを主張し、これに対して、裁判所は、生活経験を持つ一般人にとって、当該広告表現は誤解を招くに足りないため、返品及び損害賠償の主張を認めないと判断した。又、[2018]粤0303民初306号判決において、「王老吉飲み物を飲めば、寿命が10%延びる」という広告宣伝について、原告は商品購入後に宣伝通りの効果が見られないことに気づき、虚偽広告に該当することを主張した。結局、裁判所は、以下のことを述べ、原告の主張を認めなかった。「周知のとおり、人間寿命の延長は複雑な課題で、データ数字で簡単に量化できない。一般人の認知レベル及び生活経験からみて、被告の……宣伝は明らかに誇張に該当し、消費者の誤解を招かず、当該宣伝行為は誤解を招く虚偽宣伝には該当しない。……常識として、原告は、寿命が10%延長できるか否かは、当該飲み物を飲んだ後直ちに検証できるわけではないことを知っているはずである。従って、原告の主張は一般人の合理的認知及びロジックから逸れている。」(但し、当該広告表現は、中国最高裁による上記の司法解釈第8条第2号の「科学的定説がない観点、現象などを定説のある事実として商品宣伝に用いた」疑いがあると思われる。そのため、訴えられた後まもなく被告は当該広告を削除したように思われる)。
通常、一般人の常識及び経験は裁判所が判断する際の着眼点である。そういう意味では、広告宣伝者にとって、個別事件において、権威のある機関から発行される消費者調査報告などを提供できれば、裁判官の判断にある程度影響を与えられる。
文頭案件のようなSF的な創意について、特に注意すべきなのは、上海市工商局の担当者の指摘通り、「SF的な広告においてある程度の誇張を加えることは許可されるものの、消費者の誤解を招いてはならないので、SF的な広告において「SF」又は「まったく虚構である」ことを明記すべきである」。
なお、虚偽宣伝ではなく、創意に該当すると認定された前述の案件における商品は、検査に合格したものである。言い換えれば、類似の事案においては、商品自体が合格品であるか否かも裁判所の注目点になると思われる。