美容整形が病気休暇の事由になるか?

    従業員の譚さんは二重まぶたの手術を受けるために、無断で職場を離れたため、会社は無断欠勤を理由に、一方的に彼女との労働契約を解除した。譚さんは病院から発行された病気休暇証明書を提出したが、会社は「当該病気休暇証明書では、病気による休暇だと証明できないため、病気休暇ではなく、私用休暇とみなされるべきで、又、譚さんは会社所定の休暇手続を行わなかったため、会社は法に従い労働契約を解除したのは合法的かつ合理的である。」と主張した。譚さんは労働仲裁機関に仲裁を提起したが、最終的に認められなかった。本件は、無錫市人力資源?社会保障局が公布した2016年度労働人事争議仲裁の典型的な事例の一つであった。

    中国『労働法』等の関連法律法令では、「罹病」の「病」の定義や範囲を明確には規定していない。実務において、本件のような整形手術が「病気休暇」の事由に該当するか否かについては、観点が一致しない。一つの観点から見ると、病院から発行された病気休暇証明書を提供する限り、病気休暇として取り扱うべきである。しかし、上述の典型的な事例において、無錫市人力資源?社会保障局はこれと反対の意見を持ち、特に以下のことを指摘した。「罹病又は負傷による修復術は、医療性質を有し、病気休暇手続を行う限り、医療期間を享受できる。美容整形は美しさを追求するための個人的な行為であり、罹病又は負傷によるものではなく、医療行為にも当たらないので、病気休暇の医療期間を享受できる範疇に属さず、私用休暇と看做されるべきである。」 

    類似の事案に関連する判例を検索したところ、無錫市人力資源?社会保障局の意見に反する裁判例がなかった。つまり、美容整形は「疾病」に該当せず、私用休暇として取り扱うべきであるという認識が一般的である

    しかし、実務において、企業は以下の2点に注意を払うべきである。

    1、「疾病」又は業務外負傷により修復術(即ち、整形治療)が必要となった場合は、病気休暇として取り扱うこと。例えば、(2017)滬01民終12753号事件では、従業員の張さんは自宅でやけどをし、皮膚移植術を受けるために病休休暇を申請した。会社は張さんの病欠証明書を偽りのものだと判断し、無断欠勤を理由に労働合同を解除した。裁判所は審理の上、「会社は病欠証明書が偽りのものであることを証明できないため、会社による労働契約解除は違法である。」と認定した。つまり、裁判所は、従業員が負傷後に修復のための整形手術を受けることは、病気休暇として取り扱うべきであるという観点を採った。

    2、美容整形の例外として、「差し迫った」又は「必要な」美容整形は、病気休暇とみなされる可能性がある。一般人にとって、美容整形は「差し迫った」又は「必要な」ものではないが、重度の口唇口蓋裂又は顔に比較的広い範囲に痣があるなど、特殊な状況下で、相応の美容整形を受ける場合は、「差し迫った」又は「必要な」ものと認定される可能性が高い。従って、リスクを低減させるために、企業は内部規則制度において、美容整形行為を「病気休暇」の事由から明確に排除しておくことがベターだと思われる。