ビジネス活動における中国語フォントの利用に潜む法的リスク

    多くの企業はPRを行う時に、消費者の心を掴むために、特色のあるフォントを使う傾向が見られる。しかし、慎重さに欠けると、フォント又はフォントパッケージの所有者?開発者の関心を引き寄せ、著作権侵害紛争を引き起こす可能性も高くなる。その理由は、中国の司法実務において、一部のフォント又はフォントパッケージが著作法上の保護対象となる「著作物」と認定されるため、使用許諾を受けずにそれらのフォント又はフォントパッケージを使用する場合、著作権侵害になるというものである。 

    問題は、どのような場合にフォント又はフォントパッケージが著作権法上の「著作物」に該当するのか?

    まず、フォント(単独文字)の案件はケースバイケースで個別の判断になり、不確実性がある。北大方正電子有限公司(以下「方正社」という)の関連著作権侵害事件を例として上げると、2002年に方正社が濰坊文星社を訴えた事件において、北京第一中級法院及び北京高級法院は、「本件に係る文字は線によって構成されるもので、審美的な機能を持つ書道芸術に該当するので、美術の著作物に属し、著作権法による保護を受ける。」と指摘した。又、2008年に方正社がP&G社を訴えた事件において、北京市海淀区法院は、「文字を美術の著作物として保護を加えることは根拠が不足するため、P&G社の行為は著作権侵害にならない。」と指摘し、第二審裁判所は、「P&G社の行為は方正社の黙示の許可を得ることに該当するため、権利侵害にならない。」ことを理由に原判決を維持した。しかし、方正社が暴雪会社を訴えた事件において、最高人民法院は、「フォント(フォントパッケージ)は指令やデータによって構成されるものであり、線や色彩又は他の方式によって構成されるものではなく、審美的な機能を持つ平面又は立体的造形に係る芸術作品にも該当しないので、美術の著作物に属さない。」 と指摘した。又、地方においても、裁判所によって意見にばらつきが見られる。

    但し、全体的に言うと、「周知された装飾文字の基本筆画と比べ、フォントの形状は鮮明な特徴を有し、独特な審美という独創性要求を満たす場合」(出所:[2012]蘇知民終字第0161号)、美術の著作物と認定される可能性が高い。言い換えれば、フォントの所有者の許可を得ずにビジネス活動においてフォントを使用する場合は、著作権侵害と認定されるリスクが高い。 

    次に、フォントパッケージは著作権法による保護を受ける可能性が高いと思われる。しかし、フォントパッケージが美術の著作物に属するか、それともソフトウェアに属するかについては、裁判所によって意見が異なる。上記の方正社がP&G社を訴えた事件において、海淀区法院は、「フォントパッケージは独創性があり、美術の著作物に属するので、全体として保護を受けられる。」と認定した。北京漢儀会社が双飛会社を訴えた事件において、江蘇高級法院は、「フォントパッケージは字形オリジナルがデジタル化された後、人工又はコンピューターによって字形オリジナルのスタイルに基づき漢字組み合わせのルールと結合して組み立てられ、相応の座標データ及び関数の計算をもとにしたものであるので、ソフトウェアに属する」と認定した。いずれにしても、フォントと比べ、フォントパッケージの開発者の許可を得ずにフォントパッケージを使用する場合は、権利侵害と認定されるリスクは比較的高い。

    従って、企業は広告などの宣伝を行い、フォント又はフォントパッケージを利用する際に、著作権侵害警告書を受けないように、使用対象となるフォント又はフォントパッケージが無料で商用利用可能か(例えば、マイクロソフト自体搭載されている宋体、楷体など)を事前に確認しておくべきである。