退職予定者健康診断を労働者が拒否した場合、企業は責任を負うべきか?

    白さんは江蘇省ある化工企業で職業病危害に接触する作業に従事していた。労働契約期間満了に伴い、企業は労働契約を終了することを決定し、EMSにより白さんに退職予定者健康診断を行うよう通知した。白さんは受診しなかった。しかし、その後、白さんは、企業が退職予定者健康診断を手配せず、労働契約を違法に解除したという理由で、労働仲裁を提起した。仲裁、訴訟の結果、裁判所は最終的に白さんの請求を認めた(詳細は、(2015)寧民終字第1725号民事判決書を参照)。

    『中華人民共和国職業病防治法』第36条によると、使用者は職業病危害に接触する作業に従事した労働者に対し退職予定者健康診断を実施しなければならず、実施しない場合は、労働契約を解除又は終了することはできないと定められている。実務において、法に従わず、退職予定者に健康診断を手配しなかった場合、企業側は基本的に例外なく敗訴となる。しかし、本件のように労働者が個人の理由で退職予定者健康診断を行わなかった場合も、なぜ企業が責任を負わなければならないのだろうか?

    この問題については、主に以下の二つの方面から判断されたと思われる。:

    まず、手続について。『労働契約法』第42条には、「労働者に以下の状況のいずれかがある場合、使用者は本法第40条、第41条の規定に従い労働契約を解除してはならない。(一)職業病の危険を伴う作業に従事?接触した労働者で、職位を離れる前に職業健康診断を行っていない……」と規定している。第45条には、「労働契約期間が満了し、本法第42条に規定されている状況のいずれかがある場合、労働契約は相応の状況が消失する時まで継続されなければならない。」と規定している。従って、企業が労働者と労働契約を解除又は終了しようとする場合、あらかじめ退職予定者に健康診断を手配しておかなければならない。文頭の労働紛争事件において、南京市中級人民法院は、企業が労働契約終了を決定する前に労働者に対し退職予定者健康診断の通知を出さなかったため、手続が妥当でなく、違法解除に当たると認定した。

    次に、労働者の意志。つまり、労働者が退職予定者健康診断を拒否したのか、それとも自ら退職予定者健康診断を放棄したのかということである。実務において、労働者は企業と紛争が生じたり、退職予定者健康診断を嫌がったりし、往々に退職予定者健康診断を拒否する場合がある。しかも、退職後にそれを理由に企業に対し賠償を要求するケースもある。この場合に、もし企業が合理的に通知義務を履行していれば、通常、裁判所は労働契約の違法解除、終了であると労働者が主張してもそれを認めない。例えば、(2015)虎民初字第00706号事件において、企業は労働者に対し「退職予定者健康診断通知書」を郵送し、通知書において「指定期限内に退職予定者健康診断を行うこと、期間内にそれを行わない場合は自ら放棄したと見なす」という旨を示していたにもかかわらず、労働者が当該通知書を受領後も、正当な理由なく、期限内に退職予定者健康診断を行わなかったため、蘇州市虎丘区人民法院は労働者の関連主張を認めなかった。注意すべきことは、実務において、労働者が自ら健康診断を放棄する場合でも、裁判所は、「退職予定者健康診断を手配することは企業の法定義務であり、労働者は当該法定義務を免除する権利がない」ことを理由に、企業の主張を認めない可能性がある。例えば、(2015)滬二中民三(民)終字第962号事件において、上海市第二中級人民法院は、双方が労働契約の解除に合意している場合でも、企業が労働者のために退職予定者健康診断を手配する法定義務は免除されないと判断した。