秘密保持期間は、如何に約定するか?
王さんは入社時にA社と「秘密保持協議書」を締結して、在職中及び離職後2年間を秘密保持期間とし、その期間内実験データなどを含むA社の営業秘密を保持すると約定した。離職した2年後、王さんは実験データをB社に開示した。B社はこれらの情報に基づき類似の製品を製造し、低価格で販売、短期間で迅速に市場占有率を高めた。そのことに気づいたA社は直ちに営業秘密の侵害を理由に、裁判所に訴訟を提起した。しかし、王さんは、「秘密保持協議書」で約定された秘密保持期間は満了しているため、自分は関連情報を開示することができると主張した。
「不正競争防止法」第10条第1項では、「約定に違反し、又は権利者の営業秘密保持の関連要求に違反し、その掌握する営業秘密を開示、使用又は他人に使用を許諾すること」を営業秘密の侵害行為の一つとしているが、「不正競争防止法」は業者の行為を規制する法律として、会社の従業員に適用するかについては、見解の相違がある。一方、「営業秘密侵害行為の禁止に関する若干規定」(国家工商行政管理局令第86号)では、「権利者の従業員が、契約の約定に違反し、または権利者の営業秘密保持の要求に違反し、その保有する権利者の営業秘密を公表し、使用する、または他人に使用させる」行為に対して明確な禁止規定を定めている。では、権利者と従業員が秘密保持期限を約定し、その期間が満了した場合、従業員は営業秘密を開示することができると認識してよいのか?
実務において、権利者と従業員が秘密保持期間を約定した場合に、通常、期間が満了すれば、秘密保持協議書は従業員を拘束できなくなると考えられる。本件において、王さんはA社と「秘密保持協議書」を締結し、秘密保持義務と秘密保持期間を約定していたため、A社が敗訴となる可能性が大きい。その一方で、A社は、会社の営業秘密保持の制度において「従業員が退職した場合も問わず、会社の営業秘密を保守しなければならない」と規定しているため、王さんの行為が当該規定に違反したことを根拠にして主張することはできないのか?言い換えれば、契約で約定した秘密保持期間と「権利者の営業秘密保持の要求」では、営業秘密保持期間に関する規定が不一致である場合、権利者は、従業員が前述の規定に違反し、営業秘密を侵害したとして主張することはできるのか?
「労働契約法」の関連司法解釈の規定によると、雇用企業が制定する社内規則制度が労働契約の約定と不一致の場合、労働者が労働契約の約定を優先的に適用すると主張した場合は、裁判所はそれを認める。従って、一般的に秘密保持協議書の約定は、規則制度の規定より優先される。但し、A社は、労働契約において、営業秘密保持の制度などが労働契約の付属文書として労働契約と同等の法的效力を有するとあらかじめ約定していた場合、抗弁する余地がある。
実務において、多くの雇用企業は秘密保持と競業禁止に関する事項を一つの協議書に定める。「労働契約法」では競業禁止の期間が2年を超えてはならないと明確に規定されているため、その期間を約定するとき、多くの雇用企業は安易に秘密保持と競業禁止の期間を共に2年間と規定する。実際に、「労働契約法」及びその他の法律法規では、秘密保持期間に関する制限規定がないため、雇用企業が秘密保持期間を約定することは、自らを拘束することに過ぎず、全く無益なことである。
なお、前述の通りに、規則制度と労働契約又は各協議書との一致性や各文書の效力に関する約定などについては、不必要なリスク又は損失を避けるため、雇用企業が具体的な状況を見て決めるべきである。