委託加工製品に企業名称をいかに表示するか?
委託加工を行う場合、関連製品について企業名称をいかに表示すればいいのか?委託者又は受託者のいずれかのみを表示すればよいのか、それとも両方の名称をともに表示すべきなのか?この問題は、実務上、大きな混乱を招き、また各地の工商行政管理機関及び品質監督検査検疫機関による個別事件での判断・結論にもばらつきを生じる。
製品表示は主に以下の点において機能を発揮すると考えられる。(1) 消費者による製造物責任の追及権の行使可能性の確保;(2) 公平な競争を維持し、消費者の知る権利を満たす;(3)商標が使用される場合、商標の出所識別機能及び品質保障機能を発揮させる。よって、製品の表示は、①製品品質に関する法律法規、②不正競争防止法及び消費者権益保護法、並びに③商標に関する法律法規による法的規制を受けることになり、上記の三つの分野の法律法規に基づき解答を探すしかないと考えられる。
第一に、製品品質に関連のする法律については、『中華人民共和国製品品質法』第 27 条第 2 項の規定によると、製品又はその包装上の表記は必ず真実であり、かつ中国語で明記された製品名称、生産工場名称及び工場住所を有しなければならない。しかし、当該法律では、委託加工製品において、委託者それとも受託者のどちらかを「生産工場名称」として明記するかについては特に規定していない。
一方で、一部の部門規則では、この問題についてそれぞれ以下の規定がある。国家品質監督検収検疫総局による『「中華人名共和国製品品質法」実施の若干問題に関する意見』(国質検法〔2011〕83 号)第4条には、「製品の表示に関する監督問題については、『中華人民共和国製品品質法』第 27 条の規定に基づき、製品表記は必ず真実で、かつ以下に掲げる要求に合致しなければならない:製品品質に責任を負う生産者の工場名称及び工場住所を有する……。」と規定している。国家技術監督局による『製品標識及表示規定』第 9 条には、「製品標識において生産者の名称と住所を表記しなければならない。生産者の名称と住所は法により登記、登録され、製品品質責任を負うことができる生産者の名称と住所でなければならない」と規定している。又、当該条項第 4 項には、「受託企業が委託者のために製品を加工するものの、販売を行わない場合は、当該製品において委託者の名称と住所を表記しなければならない。」と規定している。更に、国家品質監督検収検疫総局による『生産許可証管理を実行する製品の委託加工の標識表示関連問題に関する通知』第 1 条では、生産許可証管理を実行する製品の表示において、受託企業の名称と生産許可証標識、番号を明記するか否かについては、生産許可証を持つ委託者が自ら選択、決定できると定めている。
従って、製品品質に関する法律法規の規定によると、通常、委託加工生産の場合は、製品において委託者の名称と住所を明記しなければならないが、受託者の名称を明記することは要求されていない。
第二に、公平な競争の維持及び消費者権益の保護の角度から見れば、『不正競争防止法』及び『消費者権益保護法』などの関連規定では、「無断で他社の企業名称又は氏名を使用すること」、「商品品質について人を誤認させる虚偽の宣伝をすること」などの行為を禁止している。しかし、委託加工製品において受託企業の名称と住所を明記しないことは消費者に誤解させる不正競争行為に該当するか否かについては、上記の法律条文の文言からでは結論が下せないと思われる。そのため、実務において、一部の工商行政管理機関が、受託企業を明記しない行為が上述の法律規定に違反すると判断し、関連企業に対して行政処分を下したケースもある。しかし、現行の法律法規に基づくと、このような行政処分の決定の妥当性について質疑の余地がないとは言えない。
第三に、商標の使用に対する規制の立場からみれば、『商標法』第43条には、「他人の登録商標を使用することを許諾されているときは、その登録商標の商品に許諾された者の名称及び商品の原産地を明記しなければならない」と規定している。従って、委託加工製品に登録商標を使用する時には、受託者の名称と産地を明記しなければならず、さもなくば、工商行政管理部門による行政処分を受けるリスクがある。又、受託者(即ち、商標使用を許諾された者)においては、商標使用許諾契約に基づく商標の適正な使用義務に違反することにより、違約責任を負う法的リスクに直面することとなる。
上記のまとめとして、委託加工製品に登録商標を使用する場合は、委託者の名称以外に、受託者の名称も併せて明記する必要がある。逆に、登録商標を使用しない場合は、関連製品において受託者の名称などを明記するか否かは、原則として委託加工の双方が約定できる。
備注:委託加工製品が輸入に係る場合はより複雑で、輸入製品の表示に関する法律法規の規定及び要求を考慮する必要がある。紙幅の制限により、本稿では検討しない。