上海自由貿易区に投資するのは本当にメリットがあるのか?

    今年9月以来、上海自由貿易区に投資することについて多くの会社から問い合わせが来た。特に上海で会社を設立しているものの、自由貿易区への投資によるメリットについて興味を持つ外国投資者も多いのである。実際は、自由貿易区に投資するか否かについては、自由貿易区の特別優遇措置を検討する以外に、自分のニーズを把握することがより大切で、即ち自由貿易区により提供できる優遇政策は、投資者のニーズを満たすことができるか否かというものである。
現在、公布された外商投資に関する上海自由貿易区の特別政策の目玉は以下の通りであると思われる。  

    一、外商投資領域の開放拡大

    まず、金融サービス、航空運輸サービス、商業貿易サービス、専門サービス、文化サービス及び社会サービスの六つの領域を含める18種のサービス業に対して、外国投資者を対象とする市場参入許可制限及び資格要求を取り消す。

    次に、ネガティブリスト管理方式を採る。これは自由貿易区内で実施された大切で具体的な政策である。リスト管理方式の下で、ネガティブリストに含められていない分野は、内資・外資一致の原則に従い、外商投資企業の設立について内資系企業と同様の手続きが適用される。これは、中国で新規事業展開の機会を求める外国投資者に対し新たな期待を与えたと考えられる。残念ながら、現行の『中国(上海)自由貿易試験区外商投資参入許可特别管理措置(ネガティブリスト)(2013年)』は基本的に2011版の『外商投資産業指導目録』の規定とほぼ同じもので、分野の開放拡大に関する一部の外国投資者の期待とずれていると思われる。又、当該文書によると、ネガティブリストについては「適時に調整を行う」が、短期間内に自由貿易区では外商投資分野を大幅に拡大する可能性は低い見込みである。
  
    二、金融監督管理制度の改革

    『中国(上海)自由貿易試験区全体方案』では、人民元資本項目の為替両替の自由化、金融市場金利の市場化を含めて一連の金融改革目標を設定し、「多国籍会社本部の外貨資金集中運営管理試行を推進し、多国籍会社が区域型又はグローバル型の資金管理センターを設立することを促進する」など試験区の金融改革とイノベーションに関する要求を掲げている。 しかし、これらの目標とイノベーションを実現するには、外貨管理などの関連実務部門の具体的な規定をベースにして支えなければならない。尚、自由貿易区内から区外への資本流動は依然として外貨管理に関連する法規の規制を受けると考えられる。 

    三、外商投資に対する管理の緩和化

    自由貿易区内に、ネガティブリストで規定された分野外での外商投資企業の設立は従来の審査認可制から届出制に変更される。また、登録資本については、最低登録資本金への制限を取り消し、引受登記制を実施し、会社設立時に株主(発起人)の初回出資額及びその比率、又は株主(発起人)の貨幣出資金額の登録資本における比率及び出資額の払込期限への制限を取り消す。それにより、外商投資企業の設立に関する審査認可結果の不確定性を下げ、一部の会社にとっては資金と時間を節約することもできる。更に、実際の設立手続きにおいて、「ワンス トップサービス」の実施により、時間を節約し手続きも簡素化される。

    前述した内容から見れば、自由貿易区について公布された新政策は比較的原則的、概括的なものであるため、今後更に具体的な関連政策及び措置の公布が待たれるところである。ところで、多くの会社が注目していた15%の所得税特恵税率などを実施できるか否かについては現時点では判断しにくい。

    私見としては、自由貿易区に新たに開放されたサービス業に従事する、又は中国で業務を展開する予定がある外国投資者でなければ、自由貿易区の新政策のために自由貿易区を選択して法人を設立することは、必ずしも良い選択肢ではなく、やはり各要素を総合的に考慮した上で決めたほうが良いと思われる。また、現時点において自由貿易区外で中国現地法人を有している外国投資者にとっては、自由貿易区内へ移転するメリットはまだ明確ではないと考えられる。