登録商標の使用に見落としがちな問題
企業の知的財産権保護意識の向上に伴い、登録商標を出願する企業も増えてきている。しかし、登録商標の使用が不適切である場合は、その商標だけでなく企業の名誉と価値に傷つけ、悪い影響を与えたり、さらには法的リスクをもたらす可能性もある。
登録商標の表記方法という最も基本的な問題を例に挙げると、見た目を重視し、「®」を真中に表記する企業があれば、国外企業をまねて商標標識の側に「TM」の文字を表示する企業もある。実際に、『商標法実施条例』第63条によると、登録商標の表記方法は、「登録商標」の文字、㊟、Ⓡの三つに限られており、かつ商標の右上または右下に表示しなければならないと定められている。又、一部の企業、特に委託加工を行う企業は、一つの商品において二つ又はそれ以上の登録商標を使用することが多い。法令では明確に規定されていないが(地方レベルでは、江蘇省工商行政管理局が公布した『企業商標管理規範(試行)』などにおいて規定を行っている)、『商標法』第49条(当該条項では、「自ら登録商標、登録者の名義、住所又はその他の登録事項を変更する」ことを明確に禁止している)から、二つ又はそれ以上の登録商標を組み合わせて使用するときに、一つのⓇのみを表記していれば、「自ら登録商標を変更する」と認定される可能性がある。また、結合商標が未登録商標であることから、Ⓡマークをつけることで、登録商標を偽ることに該当すると認定される可能性もある。
商標の使用に関する証拠の收集、保管も多くの企業が忘れがちな問題の一つである。『商標法』では、継続して3年間不使用である場合、その登録商標は取り消されると定めている。従って、企業が登録商標を出願したが、商品又はサービスにおいてしばらく使用しない場合は、登録商標が取り消されるリスクを防止又は低減するために、企業ウェブサイトでの宣伝や商標の使用許諾などの方法により登録商標を適宜に使用することを提案する。一方、登録商標が商品又はサービスにおいて使用される場合は、将来発生しうる商標権侵害に対して救済手続きを行ったり、著名商標認定を求めたりすることを円滑に行うため、商標使用に関する証拠の收集、保管にも注意すべきである。それについて、『商標法』第14条の著名商標の認定要素の関連規定を参考にすることができる。例えば関連商品発売に関する資料、市場占有率又は消費者の認知度に関する調査報告/報道、販売実績、係る商品の販促区域、資金、人力、物力状況等。
そのほかに、外国投資者にとっては、国内企業を買収・合併したり、又は国内企業と合弁及び合作企業を設立し且つ国内企業の登録商標を使用するときは、関連の法律規定に注意する必要がある。例えば、『外国投資者が国内企業を買収・合併することについての規定』によると、外国投資者が国内企業を買収・合併することにより、著名商標を保有する国内企業の実質支配権の移行を招く場合は、商務部にそれを申告しなければならない。審査結果によって、取引の中止、又は関係持分・資産の譲渡又はその他の有効な措置を講じるよう要求される可能性がある。仮に当該商標が著名商標でなくとも、合弁協議書などにおいて商標権の帰属、使用、及び許諾費の有無などを明確に約定する必要がある。