従業員の怠業について、企業はいかに対応するべきか?
A社は、従業員張さんの仕事の効率が非常に悪いため、これは「社員手帳」に記載されている規則制度に著しく違反する行為に該当するとして、張さんとの労働契約を解除した。しかし、これにより双方間に紛争が生じた。張さんが労働仲裁を提起した結果、最終的に労働仲裁委員会は、張さんの行為が規則制度に著しく違反するというA社の主張は根拠が不十分であると判断し、A社は敗訴となった。
実務において、従業員の怠業について、張さんのような「仕事の効率低下」タイプの他、配置転換やその他の待遇処置等に不満を抱き、「出勤して労務を提供しない」タイプも典型的である。企業はこの問題を合法的且つ合理的に解決するには、どのようにすればよいのだろうか?
結論から言うと、「效率低下」の怠業行為については、「業務不適任」の角度から処理したほうがよいと思われる。
『<労働法>若干条文に関する説明』第26条には、「業務不適任とは、要求通りに労働契約で約定される任務又は同一職種、同一職場の仕事量を遂行できないことを指す。」と規定されている。又、『労働契約法』第40条には、「業務不適任が証明され、職業訓練又は職種変更を経てもなお業務を全うできない場合のみに限り、雇用企業は一方的に労働契約を解除することができる。」と規定している。
従って、企業はまず合理的な任務や仕事量を明確に要求することまた、約定した上で、従業員の仕事量が、最低限に達していないことに関する根拠を明確にしなければならない。これを踏まえて当該従業員に対し職業訓練又は合理的な配置転換を行う必要もある(関連根拠は保留すべき)。職業訓練又は職種変更を経てもなお職務要求又は最低仕事量に達することができない場合に限り、企業は『労働契約法』第40条に基づき一方的に労働契約解除することができる。本件において、A社が規則制度において「仕事の效率低下」を規則制度に対する著しい違反行為と規定していること、かつそれを理由として従業員を解雇することは、明らかに立法趣旨と乖離しており、それらが労働仲裁委員会が前述の裁决を下した理由であると思われる。
一方、「出勤して労務を提供しない」怠業に関しては、その行為を無断欠勤と見なし、無断欠勤が労働規則に著しく違反することを理由に、従業員を解雇することは可能である考えられる。但し、当該方法を採る場合は、下記の事項を確保する必要がある。
まず、企業の規則制度で、無断欠勤の定義及び無断欠勤による解雇の条件について明確に規定しておくこと。無断欠勤の定義において、従業員が出勤したにも拘らず、労務を提供しない行為も無断欠勤と見なすことを明確にしておく必要がある。その理由は、『企業従業員賞罰条例』では無断欠勤と解雇について規定しているが、当該条例は既に失効しているため、企業が規定しておかなければ、無断欠勤と見なして解雇する根拠にならないからである。
次に、その従業員が「出勤しても労務を提供しない」行為を証明する関連資料をそろえることである。それは、それぞれの場合の状況に応じて、部門会議検討や労働組合の関与や会社の防犯カメラによる関連情報の収集などの方法により、相応の証拠をそろえることが考えられる。
『上海高級裁判所民一廷による調査研究及び参考』〔2014〕15号及び北京市海淀区裁判所が公布した『2014年労働争議審判での10件の典型的事件』等に記載されている事件及びその分析では、配置転換により紛争が生じ、従業員が労務の提供を拒否する場合、使用者がそれを無断欠勤と見なして、労働規則に著しく違反する行為であるという理由で解雇することは、ある程度認められている。従って、「出勤して労務を提供しない」怠業に対して適切に処理すれば、司法機関の支持を得ることができると言える。