従業員が計画生育規定に違反した場合、企業は解雇する権利を有するか?

    南京の某会社でアフターサービスに従事する李さんが第二児を妊娠した。会社は李さんが計画生育規定に違反したことを確認後、『従業員労働契約管理制度』第24条、即ち従業員が計画生育規定に違反する場合は規則制度に著しく違反する状況に該当するという規定に基づき、李さんとの労働契約を解除し、経済補償金の支払を拒否した。李さんは労働仲裁を提起したが、労働仲裁委員会は最終的に李さん敗訴の裁定を下した。しかし、李さんの状況と類似する江蘇省大豊市の従業員劉さんは労働仲裁において敗訴した後、一審で勝訴判決を受け、且つ当該事件は典型案例として2014年江蘇省高級人民法院公報に組み入れられた。

    上記の二つのケースを照らし合わせると、疑惑を抱かせざるを得ない:雇用企業は一体どうすればよいのか?
『労働契約法』第39条において、雇用企業が一方的に労働契約を解除できる状況を6種規定しているが、計画生育規定に違反した場合に関しては記されていない。。従って、雇用企業が直接従業員の計画生育規定違反を理由に労働契約を解除することは、一般的に認められていない(例外としては、江西、海南等の一部地区の地方性法規では、従業員が計画生育規定に違反した場合、雇用企業は労働契約を解除することができると明文化されている)。実務において、雇用企業が従業員の計画生育規定違反を「雇用企業の規則制度に著しく違反する」(『労働契約法』第39条第2項)として明確に規定した場合は、当該規定の有効性について議論がある。 

    肯定論を持つ人は、一般に『人口・計画生育法』における「雇用企業は計画生育規定違反の従業員に対して規律処分をすることができる」という規定、及び『労働部弁公庁による従業員の計画生育政策規定への違反に起因する労働紛争の受理に伴う問題に関する回答書簡(労弁力字(1992)15号)』(以下「回答書簡」という)における「当該労働紛争を処理するときに、労働関連の法律、法規に従うとともに、国と地方政府の計画生育政策関連の法規、規則並びに国の規定に合致する企業内部の関連規則制度に従う。」という規定を引用し、関連の法律や規範化文書では、企業が規則制度に従い従業員の規律違反行為について処分する権利を与えられている以上、企業が『労働契約法』第4条の規定に従い民主的手続きにより規則制度を制定、公示すればよいと主張する(実務において、この観点を支持する判決は少なくない。例えば、姜XXの労働紛争事件における泰州市姜堰区裁判所による(2013)泰姜民初字第2071号一審判決、南京市中級裁判所による(2014)寧民終字第5106号二審判決等)。

    否定論を持つ人は、一般に『労働契約法』第42条の「一般的に雇用企業は妊娠期、出産期、授乳期にある女性従業員と労働契約を解除してはならない」という規定、及び『女性権益保障法』第27条の「いかなる企業は、結婚、妊娠、出産、哺乳等を理由に女性従業員の賃金を下げたり、女性従業員を解雇したり、一方的に労働(雇用)契約又はサービス協議書を解除したりしてはならない。……」という規定に基づき、労働者が計画生育法規に違反したとしても、雇用企業がこれを理由に労働者と労働契約を解除してはならないと主張する(冒頭の劉さんの労働紛争事件において否定論を採用した)。
現時点、司法部門が当該問題について意見を統一していない状況下において、企業は下記の考えに沿って従業員の計画生育規定違反問題に取り扱うよう提案する。

    一、所在地の地方性規定及び司法実務の動向を確認する。即ち、①所在地の地方性規定では計画生育規定違反の従業員と労働契約を解除する権利を使用者に与えているか否か;②所在地の司法部門が関連事件の審理に肯定論または否定論のどちらかを採用する可能性があるか(裁判所が計画生育規定違反を規則制度に著しく違反する状況に取り入れることを認めれば、企業は規則制度において相応の規定を定め、且つそれに基づきそれぞれのケースを処理することができる)。

    二、地方性規定がなく、且つ司法部門の支持を得る可能性が低い場合は、従業員の昇給、年末ボーナス評定及び昇格などに影響を与えるように、従業員考課指標において計画生育規定違反を取り入れる方法が考えられる。又、規則制度違反行為として、適切に懲罰(例えば警告、一定年度内に昇格を与えない)を行う方法も考えられる。そうすることにより、周りの従業員に対して教育、警告する役割を果たすからである。

    当然、計画生育規定違反の従業員には規則制度を著しく違反するその他の行為がある場合は、雇用企業は依然として『労働契約法』第39条第2項以外の関連規定に基づき労働契約を解除することができる。