従業員の虚偽の経費精算をいかに処理するか?
上海某会社の販売担当者である廖さんは、頻繁に全国各地に出張したりするため、度々経費精算を行うため数多くの領収書を提出していた。年末に、会社が招聘した会計師事務所が会計監査を行った際、廖さんより提出された多くの領収書に記述されているものと実際の出張期日や場所が一致していないことに気が付いた。調査の結果、廖さんから提出された3万元弱の出張旅費の領収書が本来の出張とは無関係で、虚偽の経費精算に該当することが判明した。会社は警察に通報し、警察により立件され、その捜査の結果、廖さんは最終的に業務上横領罪を犯したと裁判所より認定され、懲役6ケ月に処された。
実務において、会社は従業員の虚偽の経費精算(主に「真正の領収書+虚偽の請求」及び「虚偽の領収書+虚偽の請求」という二つのタイプがある)に気づいた場合、従業員に対し精算額の返還を要求し、会社の関連規則制度に従い、警告、降級、労働契約解除などの処罰を行うのが一般的である。しかし、場合によっては、これらの方法では、あまり抑制力を持たず、その他の従業員に対しても十分な警告機能を果たさない。特に規則制度で規定された処罰が厳しくない場合、その他の従業員はそれを認識したうえで、その行為をまねる可能性がある。又、従業員が虚偽の領収書を提出して精算した場合、会社が税務部門に疑われ、責任を追及される可能性がある。
実際には、従業員の虚偽の精算行為について、刑事責任を追及することも考えられる。
『刑法』第271条では、従業員が職務上の便宜を利用して、本企業の財産を不法に占有し、その金額が比較的大きい場合は、業務上横領罪となることを規定している。「金額が比較的大きい」(即ち業務上横領罪の立件基準)については、各地の司法機関によってばらつきがある。上海の場合、上海市高級裁判所、市検察院、公安局、司法局による『本市における一部の刑事犯罪案件の取扱基準に関する意見』第33条では、業務上横領罪として5000元以上を不法に占有する場合は、「金額が比較的大きい」に該当すると規定している。従って、本件においては、虚偽の精算額が5000元を大幅に超えているため、刑事処罰の基準を満たしていると言える。
又、「真正の領収書+虚偽の請求」に係わる虚偽精算事件において、「他人、または自己のために、実際の業務経営状況と合致しない領収書を発行する」、又は「自己のために、実際の業務経営状況と合致しない領収書を他人に発行させる」、又は「他人を紹介して実際の取扱業務の状況に合致 しない領収書の発行をさせる」行為の何れかがあり、『刑法』第205条に定められる立件最低金額基準を満たす場合は、「増値税専用領収書虚偽発行罪」又は「領収書虚偽発行罪」にも該当する。
「虚偽の領収書+虚偽の請求」に係わる虚偽精算事件において、従業員が偽造の領収書と知りながらそれを保有し、立件最低金額基準を満たしている場合は、『刑法』第210条でいう「偽造領収書所持罪」を構成する可能性もある。
上記の纏めとして、会社は個別ケースの状況及び従業員の反省の態度に応じて、相応の処理方法を講じ、従業員の虚偽精算行為を有効に懲罰すべきである。
当然、事後に責任を追及することは方法の一つに過ぎないため、会社は、虚偽の経費精算をあらかじめ防ぐために、長期にわたり有効なメカニズムを構築することこそが根本的な解決方法である。そのメカニズムとしては、従業員の虚偽精算行為について適切で有効な処罰措置を社則制度に規定すること、従業員の精算に対して審査を強化すること、領収書の真正性や領収書と出張日程との一致性を厳格に照合すること、従業員のコンプライアンス意識を高める教育を重視することなどが含まれるべきである。