ビジネスモデルの知的財産保護―ビジネスモデルの特許化を中心に
コンピューターとインターネットが普及する前は、大部分のビジネスモデルにおいて、その全てあるいはその殆んどが人間の行動により実現されていた。つまり単純なビジネスモデルに該当していたため、自然的に特許法第25条の「知的活動の規則と方法」の範疇内で、特許による保護を受ける可能性は排除されていた。
広範囲におけるインターネットの応用により、より多くのビジネスモデルが、「人間」と「コンピューター」又は「人間」と「インターネット」を関連させること、さらに基本的にコンピューター及びインターネットにより実現されるなどの特徴を体現している。ビジネスモデルにおける「技術」要素が顕著になることに伴い、ビジネスモデルの創始者又はその他の権利者は必然的に特許化によりビジネスモデルを保護する可能性を探求する。
1996年に遡って、米国のチャータード・バンクは中国で「全方位サービスを集成する取引先銀行システム及びアカウント開設のシステムと方法」を特許として出願しており、当該特許は、電子マネーシステム、データ管理のコンピューターシステム及び操作方法等[1] に係る。2007年北京首都オンラインインターネット技術有限公司が出願した「コンピューターバックスクリーンによりインターネット情報を表示するシステムと方法」という発明特許は、ビジネスモデル特許に対する保護事例として、広範囲においてな関心を集めている。当該会社が発明特許を出願した目的は、「インターネットデスクトップメディア」というビジネスモデル(即ち「coopen」)の成功により競争相手から模倣されることを阻止することにあり、その特許出願は2012年に認められ、特許権を付与された。
但し、実務において、ビジネスモデルの特許を出願しても認められないことが多い。
従って、企業は特許化により自分のビジネスモデルを保護することを考慮する際に、まずビジネスモデル(単純なビジネスモデルを含まず、コンピューター及びインターネット技術等によるビジネスモデルのみを指す)について特許を出願するために満たすべき要求、特許審査部門の実務における審査規則及びその変化を把握する必要がある。
『特許審査指南』には、「もしある請求項を限定するすべての内容に、知的活動の規則及び方法の内容が含まれていると同時に、技術的特徴も含まれている場合、当該請求項は全体として、知的活動の規則及び方法でないため、専利法 25 条に準拠して専利権を取得する可能性を排除すべきではない。」と規定している。これにより、ビジネスモデルの特許化は可能とされていると言える。但し、『特許審査指南』第二部分第一章では「知的活動の規則及び方法」の内容について、「組織、生産、商業の実施及び経済などにおける管理方法と制度;……;コンピューター言語及び計算規則;コンピュータープログラムそのもの」が明確に列挙されている。従って、コンピューターソフトウェア、インターネットとの関連性が高くない、又は現有のソフトウェアやプログラムを利用するビジネスモデルについて特許を出願する場合は、拒否される可能性が高いと思われる。
実際に、特許審査官は、実務において「技術考案」に着目し、即ち、技術考案があるかどうか、あれば、「技術的手段により技術的問題を解決し、かつ技術的効果を取得する」という要件を満たすかどうかを着眼点とする。
従って、企業はビジネスモデルについて特許を出願する際に、まず「技術的問題」、「技術考案」、「技術的効果」に注意を払い、出願に係る文書において、商業性を色あせ、現有の技術における未解決の「技術的問題」を強調する。次に、「技術考案」、特に独立請求項において、コンピューター、インターネット、専用設備などの運用及びそれぞれ間の緊密な繋がりを体現する。最後に、「技術的効果」において、効率、安全などの角度から説明することに注意すべきである。
ビジネスモデルが多種多様であるため、それぞれのビジネスモデルについて特許を出願する際に、個別的な「技術的特徴」をデザインする必要がある。
そのほか、実務において、ビジネスモデルの特徴によって、特許化できないビジネスモデルも多い。それにもかかわらず、特許を出願し、その後適時に出願を撤回することにより、他人が先行して出願することを防止し、又は先行使用を証明することもできる。
注: [1] の出所: 『中国銀行業商業方法特許細分及び戦略分析』、瀋志超、呉晓光、『経済研究導刊』 2013年36期。