従業員が職務上の便宜を利用して不正取引に関与した場合は、 業務上の横領と収賄のどちらに該当するか?
B社は2008年よりA社から製品を購入しており、価格については、A社の王さんが見積書をB社の江さんに提出し、江さんがB社に報告する方法で確定されていた。2010年、王さんは江さんと共謀し、江さんは、B社がA社に支払うべき代金を、王さんとその妻である陳さんが経営しているC社に支払うようにし、また王さんは、A社の製品価格を下げ、かつ本来B社から貰うべき代金をC社から払ってもらうようにした。上述の手段により、C社は112万元余りの差額を儲け、江さんはコミッションの名義でそのうちの19万元余りを取得した。このように職務上の便宜を利用して会社の取引ルートを不正に変更したり、又は会社の取引機会を奪ったりすることは、通常「飛単」と呼ばれる(以下、「不正取引」という)。
上記の事案において、最終的に裁判所は業務上横領罪として王さんと江さんに対し、それぞれ6年10か月と3年間半の有期懲役に処し、かつ違法所得を没收する判決を下した。
しかし、司法実務において、このような不正取引行為は、業務上横領罪として処罰される場合もあれば、非国家公務員収賄罪として処罰される場合もある。特に江さんの行為が業務上横領又は収賄のどちらかに該当するかについては、尚更、観点がまとまらない。その理由は主に、かかる行為者の行為には、①両方とも職務上の便宜を利用する、②往々として両方とも直接第三者から利益を取得する、③両方とも会社に損害を与える場合が多いなど、幾つかの共通点が存在するからである。
不正取引事件の関連判決によれば、業務上横領と収賄の区別について、司法機関は以下の傾向が見られる
まず、不正取引事件における従業員の主観的意図。従業員がその職責と経験に基づいて、自らが取得する利益が実際に会社の損害の一部であることをあらかじめ知っていた場合は、通常業務上横領行為と認定される。単なる他人から「コミッション」を受け、他人に便宜を提供するものの、犯罪過程についてあまり知らず、又はコントロールできず、一部にしか関与してなかった場合は、収賄と認定される可能性が大きい。
次に、不正取引行為が発生する以前の会社と取引先との間の安定した取引関係の有無。業務上横領罪の客体が会社の財物であるため、不正取引事件において会社が損害を受けたか否かが判断要素の一つである。取引相手方が潜在的な顧客に過ぎず、会社と取引を行ったことのない相手の場合は、既存証拠により当該顧客が会社と取引を行う可能性が相当大きいことを証明できる場合を除き、損害の証明は極めて難しいため(特に、会社の代わりに他社の名義で潜在顧客と取引を行った場合)、通常業務上横領行為と認められない。
最後に、会社と取引先間に第三者の会社を入れることにより取引の差額を取得する不正取引事件において、行為者が取引相手方に対し自分の身分を示したか否か、又は差額取得のために既存の取引関係に入れた第三者の会社を知っていたかどうか、どこまで接触したことがあるのかも判断要素となる。もし行為者が取引過程において関連当事者に対し自分の本当の身分を隠したり、又は既存の取引関係に入れた第三者の会社に出資したり又は実際の経営活動に関与したり、又は取引中に頻繁にやり取りしていた場合は、業務上横領と認められる可能性が高い。
当然、不正取引行為の隠匿性及びかかる事件の多様性から、具体的な事件においてかかる従業員の行為に対して業務上横領罪又は収賄罪のどちらかで問うかは、実際の状況に応じて個別的に分析し判断する必要がある。