「残業」を行った場合は、必ず残業代をもらえるのか?
会社で受付業務に従事している江さんは、会社の指示により、国慶節と元旦の連休期間内に合計で6日間の当番勤務を行った。1年後、江さんは会社がその残業代を支払わなかったことを理由に、労働契約を解除し、会社に対し経済補償金の支払を要求した。しかし最終的に、裁判所は江さんの請求を棄却する判決を下した。
ちょっと待て!『労働契約法』等法律法令では、労働者が法定休日に勤務した場合における使用者の残業代支給義務は明らかに規定されているのにも関わらず、本件について裁判官は何か間違えたのではないのか?なぜこの裁判官は江さんの法定休日出勤の残業代支払請求を棄却したのだろうか?
ここには、一つの重要な問題がある――残業とは一体何だろうか。『労働法』の関連規定によると、残業とは、勤務時間を延長し、又は休日出勤をすることを指す。従って、法曹界の普遍的な観点として、「労働の提供」、即ち実際に関連業務を行ったことは残業の前提である。実務において、一般的には下記の状況は残業とは見なされないと解されている。
第一に、「値班」(注:日本の宿日直勤務に似ている。しかし、下記の2点①労働管理部門による許可が不要、及び②宿日直手当の最低限が規定されていない。においては日本の宿日直勤務と異なる。以下、便宜のため、「宿日直」という。)。宿日直の残業代支払請求については、各地の司法機関が比較的明確な姿勢を示している。例えば、『上海市高級人民法院による労働紛争案件の審理における若干問題に関する解答』第3条では、「自分の担当する職務に関連する宿日直勤務を行い、当直中に休憩できる場合、残業代の支払請求は認められない」と定めている。また『北京市高級人民法院、北京市労働争議仲裁委員会による労働紛争案件の法律適用問題検討会会議議事録』第22条には、「安全、消防、祝日・休日などのため、労働者にその担当業務と無関係な宿日直勤務を行わせたり、又は担当業務に関連する宿日直勤務を行わせたりして、当直中に休憩時間を与える場合、残業代の支払請求は認められない」と定められている。
v 第二に、出張中の移動時間。実務において、出張中の移動時間が残業に該当するか否かについては観点が一致していない。最高人民法院による『当面の情勢下における労働紛争案件の審判業務をしっかり行うことに関する指導意見』には、「残業代を確定する際に、労働契約の約定、労働者の職位の性質及び業務要求などの要素に基づき総合的に考量の上、合理的な判断を行わなければいけない。」と指摘している。従って、司法実務において、出張の移動時間を残業と見なさないことについて労使双方間に明確な約定又は規定があり、かつ労働者の賃金レベルが比較的高く、特に残業代も法に従い支払われている場合に、当該約定/規定が認められる可能性は高いと思われる。
第三に、高級管理職の残業代。高級管理職に不定時労働時間制(注:日本の裁量労働制に似ている)を適用している状況下で、高級管理職が残業代の支払を請求する場合は、通常認められない。実務において、高級管理職(通常部長以上)の権利及び賃金報酬が明らかに普通の従業員より高い場合、仮に不定時労働時間制を申請しなくても、不定時労働時間制を実行できる状況に該当すると見なされ、残業代の支払請求は認められないという傾向がある。
注意すべきことは、労使双方が労働契約において「残業代が賃金に含まれる」ことを約定している場合、残業代が普通の勤務時間での賃金に換算され、所在地の最低賃金基準を下回らなければ、通常労働者の残業代の支払請求は棄却される。特に広東などの地方では明確に規定されている。
上記の纏めとして、どのような「残業」につき残業代を支払うべきか、いかに残業代を支払うかなどについて、企業は法律法令、各地方の規定及び司法実務規則に基づき、合理的に対応する必要があると思われる。