「商業上の誹謗中傷」にノーと言う

商業上の誹謗中傷とは一般的に、経営者が虚偽情報を捏造するなどして他人の商業信用を毀損し、他人の競争優位性を害することで、自己の競争機会をなくし、公正な競争の市場環境を破壊する行為を指す。但し、これはあくまでも抽象的な定義であり、実際のビジネス活動において、競争相手の行為が商業上の誹謗中傷にあたるのか判断が難しい場合がある。

そのため、商業上の誹謗中傷の構成要件と類型について十分に理解しておく必要がある。

『不正競争防止法』第11条には、「事業者は虚偽の情報又は誤解を招く情報を捏造、流布し、競争相手の商業信用或いは商品の名誉を損なってはならない」と規定している。また『不正競争防止法』司法解釈第20条では、「事業者は他人が捏造した虚偽の情報又は誤解を招くような情報を流布し、競争相手の商業信用、商品の名誉を損なう場合、人民法院は不正競争防止法第11条に基づき判決を下す。」と明確にしている。

上述の規定から、商業上の誹謗中傷の構成要件は、①行為主体及び対象の限定:行為主体は事業者、対象は競争相手である。②具体的な行為:虚偽の情報又は誤解を招く情報を捏造し、流布する。③結果:競争相手の商業信用、商品の名誉を損なう。また、司法実務において、裁判所は行為主体の主観的な悪意の有無を審査する可能性がある。

実務によくある商業上の誹謗中傷行為をより理解できるよう、近年の最高裁判所及び各地の高等裁判所の商業上の誹謗中傷事件を整理し、下記の通り、典型的な類型をまとめた。

(1) 虚偽または誤解を招くような比較広告を発表し、不適切な比較及び批判的な評価を行う。例えば、(2024)最高法民申518号事件において、裁判所は「被告が事件に関わる製品について行った性能比較は全面的、客観的、正確な科学的データに基づいておらず、権威のある実験や見解に裏付けられたものでもない。その結論は事実的根拠を欠くものである」と判断し、二審裁判所の商業上の誹謗中傷に対する判決を認めた。

(2) 関連顧客に虚偽又は誤解を招く警告書、声明書、リスク通知書などを送付する。例えば、(2022)最高法知民終2586号事件において、裁判所は、「被告は関連顧客に対して注意喚起のため「特許権侵害の訴えを提起しています。権利侵害製品を購入しないでください。」という内容の手紙を送った。裁判所は審理の上、被告の特許権侵害の訴えにおける証拠は明らかに不適切なもので、権利侵害の事実を証明するには不十分である」と判断し、一審裁判所の商業上の誹謗中傷に対する判決を認めた。

(3) 悪意をもってプラットフォームにクレームをつける。例えば、(2019)川知民終134号事件において、裁判所は、「被告は商標登録証を偽造してクレームをつけることで、アリババ会社のプラットフォームが他人の商標権を侵害したとして原告を処罰し、原告の商業信用、商品の評判に損害を与えた。被告には明らかな主観的悪意がある」と判断した。これに基づき一審裁判所の商業上の誹謗中傷に対する判決を認めた。

(4) 訴訟に対して誤解を招く報道を行う、または係争中の情報を発表する。例えば、(2023)最高法民申2538号事件において、裁判所は、「被告は関連事件の訴訟が取り下げられたという事実を隠し、関連訴訟の事実について誤解を招くような報道を行った。これによって関連事件において原告の権利侵害が認定され得るという誤解を招いた」と判断した。これに基づき二審裁判所の商業上の誹謗中傷に対す判決を認めた。

(5) その他、他の経営主体又は商品に対して、虚偽又は誤解を招くような一方的で批判的、軽蔑的、中傷的な言論を発表するなど。例えば、(2021)津民終565号事件において、裁判所は、「被告の言論において原告の「医師資格証」偽造に関する言論についてのみ、一定の事実的根拠がある。それ以外の言論は事実と合致しない」と判断した。これに基づき一審裁判所の商業上の誹謗中傷に対する判決を認めた。

企業は類似の行為に遭遇した場合、監督検査部門に通報することによって合法的な権利を守ることができる。また法に基づき相手方の民事責任及び刑事責任を追及することもできる。

『不正競争防止法』では、商業上の中傷者の法的責任を明確に規定している。『不正競争防止法』第23条には、「事業者が本法第11条の規定に違反して競争相手の商業信用、商品の名誉を損なった場合、監督検査部門は違法行為の停止、影響の排除を命じ、10万元以上50万元以下の罰金を科す。情状が重大の場合、50万元以上300万元以下の罰金を科す。」と規定している。同法第27条には、「事業者は本法の規定に違反する場合、民事責任、行政責任及び刑事責任を負うものとする。財産が支払いに不足する場合は、優先的に民事責任を負う。」と規定している。