社員食堂で発生した食中毒は労災になるか

従業員の食事の便宜を図るため、社員食堂を設置する企業は少なくない。従業員が社員食堂で食事をした後に食中毒になった場合、労災に該当するのか?

『労働保険問題に関する全国総工会労働保険部の解答』(1964.04.01実施)には、「ワーカー、職員が次のような場合、信頼できる証拠があれば、業務上の事由による傷病待遇として処理することができる:本企業の社員食堂での食事後、食中毒による病気または死亡がもたらされ、それが本人による責任でない場合。」と規定している。広東省、雲南省、吉林省など一部の省・市の地方性規範文書では、「使用者の食堂で食事をして急性中毒を起こし、入院して救急治療を受けた場合は、労災と見做される」ことを定めている(詳細は『広東省労災保険条例』、『雲南省<労災保険条例>の実施方法』、『吉林省<労災保険条例>の実施方法』を参照)。

企業の社員食堂で食事をした後に急性中毒になった場合は、通常、労災と認定される。

例外的な状況は主に2つある。(1)従業員の中毒が他の原因により発生したことを示す証拠がある場合は、因果関係が成立せず、労災に該当しない。例えば、(2019)雲行申142号事件では、裁判所は審理の上、「従業員の中毒は、同僚が採取した毒キノコを食べたことによるものであり、食堂に起因するものではない。」と認定し、従業員の労災主張を認めなかった。(2)社員食堂を第三者に業務委託し、第三者が管理・コントロールを行っている場合、一部の裁判所は「労災に該当しない」と判断している。例えば、(2017)雲03行終72号事件では、従業員は会社が手配した固定食堂で食事をした後に食中毒になったが、裁判所は当該食堂が「社員食堂」の特徴に合致しないと判断した。社員食堂は会社が自社の従業員に食事を提供し、またはサービス対象者に便利な食事を提供する非営利の場所である。会社には食堂の労働者、食堂の労働者の賃金、費用支出、食材の選択に対する管理とコントロールの職責があり、比較的完備された管理体系を構築しているからである。相応の管理とコントロールが行われていない場合は、社員食堂の性質を備えていないため、労災と認定されない。

以上を踏まえ、使用者としては以下の方面から保障と対応の措置を講じると良い。

まず、自ら社員食堂を設置し、またはその経営を第三者に委託する場合は、食品の安全性を厳格に監督し、食中毒を証明する際に必要な証拠が欠くことのないように法に基づきサンプルを保存する。

次に、事件が発生し、社員食堂を外部に委託している場合は、裁判官に認められるように、上述の事例を参考に相応の証拠を準備する。
最後に、食事をした後に食中毒になった従業員が一部である場合、因果関係を証明するために、2つの側面から準備する。(1)関係従業員が食前・食後に他の食べ物を食べたか否かを積極的に確認し、可能であればサンプルを採取、固定する。(2)可能であれば、関係従業員と同じ時間帯に同じ種類のものを食べた従業員に個別の検査を行い、検査結果を保存する。