遅刻を繰り返す従業員をクビにできる?

2024年5月12日、全国労働組合総連合会が発表した記事「98回遅刻をした従業員が労働関係を解消された。裁判所が下した判決は使用者による不当解雇?!」が大きな話題となっている。従業員が10カ月の間に98回遅刻したため、企業は深刻なな規律違反にあたるとして従業員を解雇した。しかし、北京市房山区人民法院と北京市第二中級人民法院はいずれも「企業による不当解雇である」と認定した。

この判決に企業は騒然としている。勤怠管理は重要なので、多くの企業が規則制度において遅刻・早退に関する罰則を定めている。冒頭の判決によると、罰則は意味がないのか。そういうわけではない。以下の3点を満たしていれば、通常、解雇は認められる。

1.遅刻・早退に関する罰則は法に従い民主的手続を経なければならない。遅刻・早退に関する罰則規定は『労働契約法』に規定されているように企業が一方的に労働契約を解除することができる法定事由ではないため、適用の前提を企業が規則制度において明確に定めておかなければならない。しかしこのような規則制度が法定の民主的手続を経ていなければ、企業の主張を支持する根拠にならない。

2.遅刻・早退に関する罰則自体に合理性がなければならない。多くの企業が、1時間以上の遅刻を、半日の無断欠勤とみなすと定めている。しかし、この種の欠勤は実際に出勤しない無断欠勤とは異なり、機械的に加算するべきものではない。例えば、(2021)滬01民終10769号事件において、裁判所は「無断欠勤とは、労働者が労働時間中にいかなる休暇手続もせずに欠勤する行為を指し、本質的に労働者が労働義務を履行していない客観的な事実状態に属する。鈞正会社の規則制度における1時間の遅刻及び早退は半日の無断欠勤、3時間の遅刻及び早退は1日の無断欠勤とみなすという規定は、明らかに客観的な事実と矛盾し、労働者が当日、正常な労働義務履行時に享有すべき権利を排除するものである。」と指摘した。当該指摘に基づいて、裁判所は、「企業が機械的に1時間以上の遅刻を半日の無断欠勤とみなし、累計6日間の無断欠勤として従業員を解雇することは違法である。」と判断した。

3.個別案件における遅刻・早退に関する罰則の適用の合理性と公平性について

(1)罰則が合理的である場合、個別案件毎の処罰の合理性についても慎重に考慮する必要がある。冒頭の判例のように、従業員の遅刻回数が多いにもかかわらず、企業が指導も行わずに突然解雇した場合は、不当解雇と認定されるリスクが比較的高い。指導、警告など必要な措置を講じたが改善が見られない従業員を企業が解雇する場合は、違った結論となる確率が高い。

(2)罰則適用の公平性も重要である。一部の企業は、「規則制度が包括的かつ合理的である限り、実施は状況による。規則制度は武器のようなもので、いつ使うかは需要次第である。」と考えている。しかし、このように僥倖を期待する考え方は望ましくない。まじめな勤務態度の従業員に対して不公平であり、また、規則違反した従業員を黙認し、紛争が発生した場合、企業側がかえってハイリスクな立場に置かれることになる。例えば、(2020)北京02民終2263号事件において、裁判所は「企業は今まで勤怠管理を厳格に行っておらず、勤怠規則に基づく処分も厳格に実行していない。」と指摘し、「企業が勤怠規則に基づき従業員を解雇するのは不当解雇である。」と認定した。

以上のことから、企業が法に従い勤怠管理及び罰則を制定しているという前提の下、勤怠管理の最終目的を達成するため、個別案件を処理する際は合理性と公平性に注意するべきである。