人材紹介会社を利用する際のリスク及びリスク対策
人材紹介会社を通じて求人することは、多くの会社にとって重要な人材募集の手段である。しかし、実務において人材紹介会社の仲介サービスによってもたされるトラブルは珍しくない。では、使用者は、関連リスクをどのように防止又は対処すれば良いのか。
まずは、関連トラブルの一般的な発生原因を理解する必要がある。実務と裁判例から見て、トラブルの原因は主に以下の3種類である。
第一に、複数のルートが同じ候補者を推薦したことにより発生するトラブル。企業は、公開求人、内部推薦、いくつかの人材紹介会社に人材募集を依頼するなど複数の手段で求人することが多い。その結果、複数のルートから同じ候補者が推薦される可能性がある。例えば、従業員が候補者Aを推薦し、人材紹介会社もAを推薦した。企業が従業員経由でAを面接し、採用を決定した場合、人材紹介会社は「企業が不誠実で、料金の支払いを拒んでいる」と認識し、仲介手数料の請求を巡って紛争を引き起こす可能性がある。
第二に、「人材紹介サービスの保護期間」。通常、人材紹介会社の契約では「サービス保護期間」が設定され、サービス保護期間内に人材紹介会社によって推薦された候補者を「企業が採用する場合も、依然として仲介手数料を支払わなければならない」ことが規定されている。
第三に、採用した人材が短期間で退職した場合、企業が仲介手数料を支払うべきか否かによって引き起こされるトラブル。企業は人材紹介会社を通じて募集する人材に対して、通常、保証期間を設定する。一般的に試用期間が保証期間とされる。保証期間内に人材が退職した場合は、人材紹介会社は、無料で他の候補者を推薦しなければならない。また、一部の契約では「保証期間が満了後に仲介手数料を全額支払う」ことが約定される。人材紹介によって紹介された人材が保証期間満了後すぐに退職し、又は短期間内で頻繁に退職が繰り返されると、企業が、仲介手数料の免除又は減額を巡って人材紹介会社を相手に紛争を引き起こすことが度々見られる。
上述の紛争原因から、企業は下記の観点から、リスク対策を講じることができる。
まず、「複数のルートから同じ候補者が推薦される」ことにより発生するトラブルについて。契約において、「人材紹介会社から提供された候補者資料と他のルートから提供された資料が同じである場合、企業は〇営業日以内に人材紹介会社に通知するものとする。その場合、当該候補者は人材紹介会社によって推薦された者と見なさない」ことを明確に約定しておく。
次に、「人材紹介サービスの保護期間」について。契約において、次のことを明確に約定しておくと良い。「企業は一定期間内に(例えば1年間)、人材紹介会社によって推薦された候補者を採用した場合、特定の状況を除き、仲介手数料を支払う。」「特定の状況とは主に(1)他のルートを通じて当該候補者の情報を獲得した。(2)候補者の職位に実質的な変化があった、例えば職責、職級が異なる等。(3)給料等級の変化幅が〇〇%を超える、などを含む。この点について、(2016)蘇02民終3090号事件において、裁判所は肯定的な意見を示し、「候補者が再入社した時の職責、職級が変更されたため、「人材紹介サービス保護期間」の除外状況に該当し、企業は残りの仲介手数料を支払う必要がない」と認定した。従って、事前に明確かつ細かく契約内容の取り決めを行っていた場合は、認められる可能性が大きくなる。
最後に、人材の短期間退職の問題について。人材紹介会社に対する考察と選別力を強化し、信義則に違反したことのある人材紹介会社を適時排除するとともに、候補者の社会保険料の納付状況を予め確認し、社会保険料の納付状況が職歴と合わない、又は2ヶ月ないし1年以内の短期納付回数が多い候補者を採用しないようにすると良い。