もうバッチリ?!定年退職の実務ポイント

定年退職においては、女性従業員の定年退職年齢の他にも、注意しなければならないポイントが多数ある。以下ではQ&A方式で分かりやすく解説します。ぜひ実務のハンドブックとしてご活用ください。

Q1:労働契約が終了するのはいつ

A1:『労働契約法』第44条では、「法に基づき、労働者が基本養老保険を受け始めた場合に労働契約は終了する。」、『労働契約法実施条例』第21条では、「労働者が法定定年退職年齢に達した場合、労働契約は終了する。」と規定している。また地方によって規定が異なる。例えば、北京や広東などでは「労働者が法定定年退職年齢に達した、または基本養老保険の待遇を始めた場合、労働関係は終了する。」と定めており、2つの状況のうち一方に該当すると労働関係が終了となるが、上海では、「労働関係終了の前提は定年退職年齢に達しており、かつ規定に従い定年退職手続が行われた」ことである定めている。

つまり、労働者が法定定年退職年齢到達後も、使用者との労働関係は自動的に終了しない。

定年退職年齢到達後、労働関係が継続し続けるという問題を回避するために、使用者は下記の2点に注意しなければならない。

(1)規則制度において、「労働者が法定定年退職年齢に達している、または基本養老保険を受け始めるとき」等と労働契約が終了となる2つの状況を定めておく。

(2)労働契約終了日についての紛争を避けるため、定年退職手続に時間を要することを考慮し、現地の社会保障部門が認める範囲内で早いうちに定年退職の手続きを始め、労働者の定年退職当年の誕生日までには完成させる。

Q2:定年退職月の給与は支払う

A2:司法実務において意見が一致していない。『<労働者定年退職・退職に関する国務院の暫定弁法>の貫徹執行における若干問題に関する国家労働総局の処理意見(草案)』第17条には、「労働者が定年退職、退職するとき、定年退職・退職月の賃金は通常通り支給される。定年退職費、退職生活費は翌月から支給される」と規定している。当該規定は発効していないが、多くの裁判所が「使用者が定年退職・退職月の賃金を支給しなければならない」という判決を下す根拠としている。上海市人力資源と社会保障局はその公式ウェブサイト内において、「定年退職月は従業員の実際の労働時間に応じて賃金を支給すること」と明確にしている。北京市高級人民法院は(2016)京民申4594号裁定書において、「従業員が定年退職処理意見を引用した場合、裁判所は、労働者が定年退職年齢到達後、使用者に労働を提供していない事実に基づき、使用者が労働者へ定年退職月の賃金の全額を支払う必要はないと判決を下した。」と指摘した。

上述のことに鑑み、賃金額の紛争リスクを下げるために、使用者は規則制度又は労働契約、集団契約において、定年退職月の賃金支給基準を明確に規定しておくことが望ましいと思われる。

Q3:定年退職月の従業員の社会保険料を会社は納付しなければならない? 

A3:納付しなければならない。社会保険料は月単位で納付されるものであり、定年退職手続きの段階では使用者と従業員の間には依然として労働関係が存在するからである。

Q4:従業員はいつから年金を受領できる

A4:『基本年金の社会化支給の一層規範化に関する通知』(労社庁発2001年8号)の第2条には、「基本養老保険待遇の計算・審査手続を厳格に実行し、新規定年退職者に対して翌月から基本年金を支給する。」と規定している。従って、条件を満たしている場合は、定年退職手続が完了した翌月から年金を受領することができる。

Q5:退職する従業員が当年の年次有給休暇を取得できる

A5:『企業従業員年次有給休暇実施方法』第12条の規定によると、労働契約が終了する際に、年次有給休暇日数を換算しなければならない。従って、最終月の賃金を決済するにあたり、年次有給休暇の手配や、未消化の年次有給休暇を法に基づき賃金換算することを忘れずに行わなければならない。