債権者代位権の行使について

AはBから借金をしたが、返済することができない。CがAに借金をしていることを知ったBは、Cに対して直接自分に返済するよう要求した。これは債権者が債権者代位権を行使する典型的なケースである。『民法典』第535条には、債権者代位権の行使について以下の規定がある。「債務者がその債権又は当該債権と関連する従たる権利の行使を怠り、これによって債権者の期限到来債権の実現に影響を与えた場合は、債権者は人民法院に対して、債権者自身の名義で、相手方に対する債権者としての権利を代位行使する旨を請求することができる。但し、当該権利が債務者自身に専属する場合は除外する。代位権の行使範囲は、債権者の期限到来債権を限度とする。債権者による代位権行使に必要な費用は、債務者が負担する。相手方は債務者に対する抗弁がある場合は、債権者にそれを主張することができる。」

従って、代位権は法定権利に該当し、代位権の行使は、債務者又は従たる債務者に同意を得る必要がない。但し、代位権を行使するときは、上述の『民法典』第535条での要件を満たし、即ち「債権が期限到来済み」、「債務者が従たる債務者に対する債権の行使を怠る」ことを証明する必要がある。

債権者は、債務者が従たる債務者に対して期限到来の債権を有していることを如何に証明するのか?

1.商業秘密保護及び契約相対性に鑑み、債権者が債務者の債権状況を把握するのは難しい。実務において、解決策は主に2つある。その一つは、債務者に協力してもらうこと。具体的には、債務者から従たる債務者へ債権譲渡通知を送達した(実質的に債権譲渡行為に相当するため)証拠、または従たる債務者に対して債権を有している証拠を提供してもらうことが含まれる。例えば、(2022)京02民終7638号事案において、債務者は従たる債務者に対して債権譲渡通知を出し、かつ従たる債務者は従たる債権額を確認した。そしてもう一つは、一連の契約関係があること。典型的なものは、建設工事施工契約における所有者、請負業者、下請け業者の関係が挙げられる。例えば、(2022)滬02民終6293号事案において、孫請け業者は下請け業者を飛び越え請負業者を訴え、代位権の行使を請求した。最終的に裁判所は孫請け業者の請求を認めた。総じていうと、1つ目の解決策は2つ目の解決策よりはるかに成功の可能性が高い。但し、1つ目の解決策を取る場合は、債権者は2つのポイントを把握しておくべきである。(1)債権譲渡通知のみを唯一の証拠とする場合は、被従たる債務者の抗弁が認められやすい。当該状況を避けるためには、債務者に従たる債務者向け債権譲渡通知を発行してもらうときに、債権関連証拠(契約書、債権額を確認するためのその他の文書など)を提供してもらうこと。(2)正式に訴訟を提起するときに、債務者を民事訴訟における第三者とすること。

2、「債務者が従たる債務者に対する債権の行使を怠る」に該当するか否かついては、理由の如何を問わず、司法実務において「訴訟又は仲裁により、従たる債務者に対して期限到来の債務を主張しない」を判断基準とする。

実務において、代位権の行使にあたって、何度訴訟を行う必要があるのか、即ち、従たる債務者を直接訴えればよいか、それとも債務者を訴えた後、従たる債務者を訴える必要があるか?という疑問を債権者が抱えることが多い。

答えは一概には言えない。期限到来の債権が明確で、かつ当事者に異議がない場合は、債権者は従たる債務者のみを訴え、つまり、訴訟を1回提起すればよい。司法実務からみて、期限到来の債権額が決まっているものであれば(例えば、借金)、債務者が一定の方式で債権額を確認した上で、直接訴訟を起こすと、代位権の行使は通常認められる。多くの判例において、債権者が主張した期限到来の債権に対して債務者が異議を申し立てたり、又は違約金の有無について意見が一致しなかったりすることにより、裁判所が「期限到来の債権額が不確定」と判断した場合、審理の上、債権者の請求を棄却する。例えば、(2021)滬0116民初12697号事案において、債務者が「違約金が存在するので、期限到来の債権額は不確定である」ことを主張した。このような場合、債権者はまず債務者を訴え、その判決書、調停書又は仲裁裁決書などを「債権が期限到来済み、かつ明確である」ことを証明し、その後代位権を行使するため従たる債務者を訴える。典型的な判例は (2020)最高法民再231号、(2022)滬02民終6293号、 (2022)京02民終6005号等が挙げられる。