前職調査のリスク及び対応策
HRとして、従業員の前職調査を行う際に直面する状況は一般的に以下の2つだろう。一つは、採用選考段階で会社の代表として候補者の前職について調査を行う場合、もう一つは、他社で行われる前職調査に協力する場合である。しかし、前職調査は往々に従業員の個人情報に関わるため、非常にセンシティブなものである。特に『個人情報保護法』公布後、HR達はさらに気に病むようになっている。
よって、本号では、前職調査に関わるリスクや対応策について検討しよう。
まずは、自社の採用候補者に対して前職調査を実施するにあたって、HRは以下の問題に留意すべきである。
(1)どこから情報を得たか。情報の出所が不適切な場合は、高い法的リスクに直面する恐れがある。例えば、2019年広州の警察機関は「獵頭搜(http://www.lietousou.com)」ウェブサイトによる自然人の個人情報の不法獲得、提供、売買に対して立件し調査した結果、最終的に130人余りの容疑者(うち、ヘッドハンティング及び知名企業のHRを含む)を逮捕し、2億件以上の個人情報が関わっていたことが明らかになった。当該ウェブサイトの登録者数は6万人に達しており、ユーザーは企業内部の連絡先や個人履歴書をアップロードするでよりポイントを獲得し、獲得したポイントを利用して他のユーザーがアップロードした企業内部の連絡先や個人履歴書をダウンロードすることができる。このようなやり方は、「互恵互助」のように見られるが、実は犯罪行為に該当する。実務において、比較的適切な方法としては、前職調査の実施について事前に採用候補者に告知し、かつ前職調査のルート、方法などについても採用候補者の同意を得ておくことである。
(2)個人情報の収集が必要かつ合理的な範囲内であるか否か。『個人情報保護法』では、「個人情報の収集は、取扱目的を実現する最小範囲に限定しなければならず、過度に個人情報を収集してはならない。」と明記されている。採用候補者に対して前職調査を行う目的は、前職の在職期間や職位、また業務内容や権限やパフォーマンス等を把握すること、そして職歴詐称の有無を確認することにある。従って、前職調査に係る個人情報は上述の範囲を超えてはならない。
(3)収集した個人情報を如何に取り扱うか。具体的に言うと、収集した個人情報は人事担当者、採用候補者の上司以外には口外しないこと。関連個人情報を、利用後に人事部の指定メンバーが統一的に保管し、また有償か無償かを問わず、いかなる第三者に無断で提供してはならない。
次に、他社からの前職調査に協力できるかどうかを判断するには、以下の問題を確認しておく必要がある。
(1)従業員の同意を得た証拠の有無。例えば、従業員が入社または退社の際に、使用者が書面で「他社から前職調査を要求されるときに、会社が当人の個人情報を提供する」ことについて、従業員に告知し承認を得ていたという証拠がある場合、他社による前職調査に協力できる。そのような証拠がない場合、つまり他社による前職調査に協力することについて当該従業員の書面による同意を得ていない場合は、前職調査に協力することにリスクが伴う。
(2)提供できる従業員の個人情報の範囲。従業員との間で具体的な提供事項を明確に約定している場合を除き、会社は前述した範囲内で従業員の個人情報を提供することができる。
(3)採用という名目で、個人情報を詐取を防止するため、従業員の個人情報を提供する前に、相手(他社)の代表電話、公式電子メール、又は従業員本人への確認を行い、前職調査を行う他社担当者の身分を確かめることが望ましい。