これってパワハラ?
2020年8月、とある銀行員がミニブログにで「長期にわたって上司からの精神的苦痛を受けており、3か月にわたり、エレベーター横の給湯室に閉じ込められている。食べること、トイレに行くことだけ許されており、勤務時間内に給湯室を離れることは許されない。離れたら、守衛に強制的に追い返される」などと記載した摘発状を実名で掲載した。これをきっかけに、パワハラ(「職場PUA」とも呼ばれる)が、再び注目を集めることとなった。
パワハラ(英語:power harassment)は日本の職場で多発すると思われている。中国の法令ではパワハラを定義していない。
日本『パワハラ防止法』(注:実際には『労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律』第30条第2項から第7項並びに関連条項の改正案を指す)によると、パワハラは次の3要件を同時に満たさなければならない。①業務上優先的な関係を背景とした言動。②業務上必要かつ相当な範囲を超えるもの。③労働者の就業環境が害されるもの。「業務上優先的な関係」とは、パワハラ被害者が行為者に対して抵抗・拒絶することができない関係を指し、例えば、行為者の職務上の地位が上位の者である、もしくは行為者が同僚又は部下で、当該行為者の協力を得なければ関連業務の円滑な遂行が困難となるなど。
日本の法令では、「身体的な攻撃、精神的な攻撃、人間関係からの切り離し、過大な要求、過小な要求、個への侵害」と6種のパワハラ行為を例示している。本件において、上司の行為は明らかに「人間関係からの切り離し」に該当する。
中国の現行の法律からみて、上述の日本の法令に例示された行為に該当する場合は、『労働法』、『治安管理処罰法』の関連規定に基づき、関係者の責任を追及する可否を検討することができる。
(1)『労働法』第96条の規定によると、暴力、威嚇又は身体の自由を不法に拘束する手段で労働を強制した場合、又は労働者に対し侮辱、体罰、殴打、違法捜索又は拘禁を行った場合、公安機関は行為者に対して15日以下の拘留、罰金又は警告を行う。犯罪に当たる場合は、法により行為者の刑事責任を追及する。
(2)『治安管理処罰法』第42条第5項の規定によると、繰り返し淫猥、侮辱、恐喝又はその他のメール(情報)を送りつけ、他人の正常な生活を妨害した場合、5 日以下の拘留又は 500 元以下の罰金に処する。情状が比較的深刻な場合、5 日以上 10 日以下の拘留に処し、500 元以下の罰金を併科することができる。
上述の法律で定められた範囲外の行為に該当する場合は、現行の法律では、行政処分又は刑事処罰を求めるのは難しい。
社内規則制度でパワハラ行為について規定、罰則を明確に定めている場合、企業は関連行為者に対して処分を行うことが可能であるものの、係る行為者の言行がパワハラ行為に該当するか否かの判断は不確定性があり、根拠となる事実を立証することも相当難しいため、慎重に判断するべきである。